アザラシの仲間とアシカの仲間(トドやオットセイ、オタリアなど)の見分け方はご存知でしょうか?
私もアザラシに嵌る前は「なんとなく色が茶色っぽくて単色なのがアシカの仲間。灰色っぽくて模様があるのがアザラシかな?」程度に過ごしてきました。が、もうちょっとしっかりとした違いがあります。
アザラシとアシカの違い① 後脚の使い方(歩き方・泳ぎ方)が違う
アザラシとアシカで一番違うのは、後脚の使い方です。より海中の環境に適合し、一方で陸上で四つ足で立てなくなるように進化しているのがアザラシ、そこまで行かず陸生の四つ足動物のように歩くのがアシカです。実際に写真や動画で紹介します。
以下の写真はアザラシ。
アザラシは、前脚だけで体を支えられるほどではなく、また前脚と後脚で四本足で立つことはできず、横たわっているような感じです。
以下はアシカの仲間。
アザラシに比して、アシカは後脚が陸上哺乳類の使い方に近いことが分かると思います。
これらは実際に陸上を歩く(アザラシの場合は歩くと言うより這うという表現のほうが実態に近いのですが)動画を見ていただくと顕著。おたる水族館の飼育個体の歩行の様子を紹介します。
まずはアザラシの歩く様子から。這って歩く様子が見てとれます。アザラシは「芋虫のように這って歩く」と言いますが、なるほど、、、と思います。
ついでアシカ(の仲間のトド)の歩く様子。四本足で歩いているのが分かると思います。
こうやって並べて見ると陸上の移動の仕方がだいぶ違うのが分かるのではないでしょうか。
水中の泳ぎ方も随分異なります。福岡の水族館「マリンワールド海の中道」はアザラシ(ゴマフアザラシ)とアシカ(カリフォルニアアシカ)を同じプールで飼育しているので、泳ぎ方の違いを観察しやすい施設です。こちらで撮影した動画をアップしておきます。
前足が長いのがアシカ、前足が短いのがアザラシです。 アシカは前足をオールのように使って泳ぎますが、アザラシは前足は体にぴったりつけて、方向転換の時にちょっと使うくらいで、後足をメインに使って泳ぎます。
↓はアザラシだけの動画です。(男鹿水族館GAOで撮影した動画です)
アザラシとアシカの違い② 耳たぶが無いのがアザラシ、有るのがアシカ
アザラシとアシカは耳たぶの有無が異なります。
まずはアザラシの耳の様子。目の横にぽつっと穴がありますが、これが耳の穴。
次いでアシカの仲間。小さいながらも耳たぶが有るのが分かると思います。
上の前脚・後脚の差に比べて些末なことに見えてしまいますが、海中で水の抵抗を受けたり熱を放出したりする耳たぶが無いアザラシのほうがより海中への適応が進化していると言えるのかもしれません。
これで、動物園や水族館でアザラシとアシカは迷わないはず!
ま、鰭脚類にはアザラシとアシカの他にセイウチもいますが、これをアザラシやアシカと間違うことは無いでしょう。。。
(参考資料)世界に生息する鰭脚類の分類
鰭脚類(アシカ・セイウチ・アザラシ3科)の種名リストです。種名が太字で備考に◎がある種は日本近海に生息する(生息していた)種です。
科名 | 属名 | 和名 | 学名 | 備考 |
---|---|---|---|---|
アシカ科 | ミナミオットセイ属 | ミナミアメリカオットセイ | Arctocephalus australis | |
アシカ科 | ミナミオットセイ属 | ニュージーランドオットセイ | Arctocephalus forsteri | |
アシカ科 | ミナミオットセイ属 | ガラパゴスオットセイ | Arctocephalus galapagoensis | |
アシカ科 | ミナミオットセイ属 | ナンキョクオットセイ | Arctocephalus gazella | |
アシカ科 | ミナミオットセイ属 | フェルナンデスオットセイ | Arctocephalus philippii | |
アシカ科 | ミナミオットセイ属 | ミナミアフリカオットセイ | Arctocephalus pusillus | |
アシカ科 | ミナミオットセイ属 | グアダルーペオットセイ | Arctocephalus townsendi | |
アシカ科 | ミナミオットセイ属 | アナンキョクオットセイ | Arctocephalus tropicalis | |
アシカ科 | キタオットセイ属 | キタオットセイ | Callorhinus ursinus | ◎ |
アシカ科 | トド属 | トド | Eumetopias jubatus | ◎ |
アシカ科 | オーストラリアアシカ属 | オーストラリアアシカ | Neophoca cinerea | |
アシカ科 | オタリア属 | オタリア | Otaria byronia | |
アシカ科 | ニュージーランドアシカ属 | ニュージーランドアシカ | Phocarctos hookeri | |
アシカ科 | カリフォルニアアシカ属 | カリフォルニアアシカ | Zalophus californianus | |
アシカ科 | カリフォルニアアシカ属 | ニホンアシカ | Zalophus japonicus | ◎ 絶滅 |
アシカ科 | カリフォルニアアシカ属 | ガラパゴスアシカ | Zalophus wollebaeki | |
セイウチ科 | セイウチ属 | セイウチ | Odobenus rosmarus | |
アザラシ科 | ズキンアザラシ属 | ズキンアザラシ | Cystophora cristata | |
アザラシ科 | アゴヒゲアザラシ属 | アゴヒゲアザラシ | Erignathus barbatus | ◎ |
アザラシ科 | ハイイロアザラシ属 | ハイイロアザラシ | Halichoerus grypus | |
アザラシ科 | クラカケアザラシ属 | クラカケアザラシ | Histriophoca fasciata | ◎ |
アザラシ科 | ヒョウアザラシ属 | ヒョウアザラシ | Hydrurga leptonyx | |
アザラシ科 | ウェッデルアザラシ属 | ウェッデルアザラシ | Leptonychotes weddellii | |
アザラシ科 | カニクイアザラシ属 | カニクイアザラシ | Lobodon carcinophaga | |
アザラシ科 | ゾウアザラシ属 | キタゾウアザラシ | Mirounga angustirostris | |
アザラシ科 | ゾウアザラシ属 | ミナミゾウアザラシ | Mirounga leonina | |
アザラシ科 | モンクアザラシ属 | チチュウカイモンクアザラシ | Monachus monachus | |
アザラシ科 | ハワイモンクアザラシ属 | ハワイモンクアザラシ | Neomonachus schauinslandi | |
アザラシ科 | ハワイモンクアザラシ属 | カリブカイモンクアザラシ | Neomonachus tropicalis | 絶滅 |
アザラシ科 | ロスアザラシ属 | ロスアザラシ | Ommatophoca rossii | |
アザラシ科 | タテゴトアザラシ属 | タテゴトアザラシ | Pagophilus groenlandicus | |
アザラシ科 | ゴマフアザラシ属 | ゴマフアザラシ | Phoca largha | ◎ |
アザラシ科 | ゴマフアザラシ属 | ゼニガタアザラシ | Phoca vitulina | ◎ |
アザラシ科 | ワモンアザラシ属 | カスピカイアザラシ | Pusa caspica | |
アザラシ科 | ワモンアザラシ属 | ワモンアザラシ | Pusa hispida | ◎ |
アザラシ科 | ワモンアザラシ属 | バイカルアザラシ | Pusa sibirica |
コメント