2005年9月の第三週から阿寒湖に滞在していますが、九月の連休は休みが取れました。
「休みをどう過ごすべかなーっ、せっかく阿寒湖に来ているんだから道東を満喫しよう、、、未踏アザラシスポットの釧路動物園やおびひろ動物園に行くもよし、知床は連休+世界遺産効果で混んでいるから勘弁・・・。」などと思案しながら、9月16 日(金)の夕方に宿泊地に帰る道。ふと空を見上げたら満月が浮かんでいました。
それを見てひらめきました。今日か明日は大潮かも、大潮の干潮の時 に船に乗って野付の野生アザラシを見に行けば、干潟で寝転んでいるアザラシが見られる、、、!
野付半島の干潟で寝転んでいるアザラシの写真は野付半島関連の本やサイトでたくさん見ており、かなり興味を持っていたのでした。
早速滞在先に帰ってからパソコンで気象庁の潮汐サイトで野付半島に近い根室市・花咲港の干満を調べます。やはり大潮は明日17日で、花咲港の干潮は午前9時くらい。続いて、野付半島の観光船の時刻を調べます。一日2便しか出発しない観光船ですが8時10分に出航し干潮の真っ只中にアザラシ生息地付近を通過するであろう便がある!
野付まで約120kmほどの阿寒湖に滞在し、休日で時間を持っている自分。大潮でかつ干潮時間が、一日2便しかない観光船のうち一便と一致している。もう天が「行け」と命じているようなもんで、野付行きを決定します。
早朝出発に備え、車にガソリンを仕込んでおきます。
野付半島へ向かう
翌17日(土)は朝5時に起き、5時半に阿寒湖を出発。阿寒横断道路を一路東へ。野付半島を目指します。途中朝ごはんを食べたりしたものの、野付半島の観光船が出航する尾岱沼漁港に7時半くらいに着きました。観光船乗り場は思ったより小さくこじんまりとしていました。料金の2500円ほどを払い乗船チケッ トを手にします。
窓口の職員さんに「アザラシを見に来たんですけど見られますか?」と聞いたところ「多分見られます」との回答。あくまで野生動物ですか ら、「絶対」は無いのでしょう。
中央三角屋根が観光船のチケット売り場、
右の建物は水産物加工工場
町営の観光船です。
後ろの漁船と比べてもそれほど大きさは変わりません
観光船に付いていたアザラシマーク
さてさてこの観光船、いかにもな観光船桟橋とかがあるわけでは なく、普通の漁船が舫ってある漁港から出航するようです。チケット売り場から乗船口までも離れていて漁協の工場の裏のようなところを通って自分の足で5分ほど歩いていきます。
船は写真の通り、小さな船です。阿寒湖のような普通の湖や海にような遊覧船を想像していたので、少々驚きました。船というよりモーターボートといったほうが普通の人には想像に合うでしょう。ただ実際に乗ってみると内部はしっかりしています。室内はちゃんとした座席があり、さらに船後部は周りがよく見える ようにデッキになっています。さらに二階、というより屋上もありアザラシを眺めるには申し分無い施設です。逆に小さな船の方が小回りが効くのでしょうし、 お客さんの数もそれほど多くないのかもしれません。
乗り場に行く途中、海の様子を見ますが目論見どおりだいぶ水位が下がっ ているようです。
尾岱沼漁港内の堤防
海草の生え具合からも水位がだいぶ下がっているのがわかります
出航してアザラシ生息地へ
動画(1.4MB)
堤防の外へ、出航です
時間が来て乗船します。船に乗る時、船長(?)さんに「今は大潮の干潮ですか?」と聞くと「そう、今日は大潮、ええ時に来たな、その写真のように見えるわ」と言って、船に備え付けられている干潟に転がったアザラシ写真を見せてくれます。さらに船長「今日天気がよくないからあんま良い写真とれんかもなー」とおっしゃります。普通「船長」というと帽子を被って制服を来ていてサービス業なイメージですが、この船の船長はどうも漁船で鉢巻を締めてガシガシ魚を獲っていそうな雰囲気。実際のところ本職は漁師さんで観光船の運航は兼業なのでしょう。軽トラで船に来ていたし。本日の乗務員さんは 漁師風のおじさん二人です。
天気の話 題が出てきましたが、曇りと晴れの中間くらいでした。雨の心配はなさそうです。
いよいよ出航、私は屋上に陣取ります。お客さんは私以外に夫婦のようなカップルが一組の3人でした。連休の初日と考えると少しさびしい数ですが、土曜の朝便なので、そんなもんかな。私には客数は少ないほうがありがたいですが。
船は港を出ると結構なスピードが出ます。確かに遊覧船というよりモーターボート。出航前は干潮で潮が引いて干潟になった海に、どうやって船で行くのか不思議だったのですが乗ってみてわかりました。野付湾内は水深が均一ではなく、船は水深が深い、干潟の中の水路を行くようです。イメージとしては洪水で溢れた川があって、船が行くのは川の本流、干潟は水が溢れた部分というような状態で す。
動画(0.8MB)
船は速く飛んでいるサギを追い抜きます。
漁をする漁師さんたちです
船が速いので、体に当たる風が強いです。なにやらスピーカーで 野付半島の観光案内をやっているようですが風でまったく聞き取れません。野付半島と北海道に囲まれる海は野付湾と呼ばれていますが、湾内では漁師さんがアサリを獲っている様子をかなり見ました。漁師さんたちを横に見ながら船は進みます。
干潟の上のアザラシたち
やがて船は湾外へ向かう太い水路の本流を離れ、支流に入ります。この辺りから双眼鏡で見てみたらアザラシを発見しました。予想通り干潟の上で半分ほど体を空中に露出してゴロゴロ転がっ ています。
船のエンジン音に気付いたのがキョロキョロしたりしています。双眼鏡で観察するとほとんどのアザラシはゴマフアザラシですが何頭かゼニガタアザラシっぽいやつがいて、一頭は確実にゼニガタアザラシでした。ゼニガタは太平洋岸から迷い込んできたのでしょうか。本人は何の違和感も無く周りのゴマフに溶け込んでいる雰囲気が素敵。
襟裳岬では多数のゼニガタの中にゴマフが紛れ込んでいますし、この二種類は生活史が似ていて想像以上に近縁なのかもしれません。
動画(0.8MB)
徐々にアザラシの群れが見えてきました。
船を気にしないで寝ているやつもいれば真っ先に海に飛び込んでしまうのもいます。
動画(MB)
干潟の上をフニフニ歩くゴマフアザラシです。
動画(1.5MB)
これもゴマフアザラシたちの様子ゼニガタも写っていますね。
ゴマフアザラシと一緒に暮らすゼニガタアザラシです。
こう見るとゴマフでもずいぶん模様が違います。
アザラシの周辺にはアオサギも暮らしています。
船はエンジン音を下げ速度を落とし、やがてエンジンを止めて惰性でゆっくりアザラシに近づきます。船は写真の通りかなりアザラシの近くまで行きます。ありがたいことですが、アザラシたちはかなりの警戒の表情を向けてきます。船は基本的に一日2便(日曜は3便)、数分立ち寄る程度で、ずっとアザラシが暮らしているので、特にアザラシの生態に大きな影響はないとは思いますが…。これが観光客たくさん乗った大型船とかだと、もっと警戒させると思われます。小型船でアザラシの生活の中にお邪魔する現在の雰囲気を保って欲しいところです。
動画(1.8MB)
船とアザラシの距離はこのくらいです。
動画(1.1MB)
干潟から逃げたアザラシが泳いでいるところです。
この4頭は最後まで船を気にせず干潟で寝ていました。
干潟に潜ろうとしているアザラシです。
アザラシのいた場所は野付湾内の真っ只中。ここのアザラシを陸から観察するのは厳しい。
船は数分アザラシを見物したあと、生息地を離れます。水中のアザラシたちがヒョコヒョコ顔を出して見送ってくれます。
動画(0.6MB)
名残惜しいながらもアザラシ生息地を離れます。
続いて向かう先はトドワラ。荒涼とした雰囲気ですが、付近には建築物もあったり、漁師さんが漁をしたりしているので、写真ほどさびしい感じはしません。アザラシサイトなので詳しくは書きませんが、トドワラ周辺もかなり素敵。トドワラに40分ほど滞在したあと尾岱沼漁港に戻ります。帰り道はアザラシ生息地には行かず漁港に直行します。とはいえアザ ラ シははっきり見えるくらいのところを通り抜けていきました。
動画(1.7MB)
これは尾岱沼漁港に戻る時に撮影したものです。手前に小さな群れが写っていますが、行く時に寄った(上の写真を撮影した)群れは右上の大きな群れですね。
帰り道に撮影したアザラシの群れ。これは行く時に寄った生息地の群れです。
観光船チケット売り場前のゴミ箱もアザラシです。
おまけ~トドワラの様子~
アザラシを見たあと観光船で立ち寄ったトドワラの写真です。
観光船はこのような浮き桟橋につながれます。
浮き桟橋を降りると付近一面は水が引いて干潟になっていました。
木道があります。潮が引いているので地面が露出していますが…。
これがトドワラ。
枯れ木みたいのが残っていて荒涼とした雰囲気を醸し出します。
トドワラにいた蝶。名前はわかりません。
トドワラ付近から観光船浮き桟橋方向を見てみました。
浮き桟橋付近の干潟、漁師さんが何やら獲っていますが左手の船は完全に陸に乗り上げています。
漁をしている間に潮が引いて満ちたら帰るのでしょうね。
桟橋のロープにくっついていた乾燥に弱そうな海草も潮が引いている影響で空気中に出ていました。
2005年9月17日作成
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