夕方まで海で遊んで、その帰り道のことです。とても美しい夕焼け空が拡がっていました。色のグラデーションがある夕方の空は空の広がりが感じられて心ときめく物がありますね。
晴れた夕方の空も美しい物ですが、この季節の晴れた日の八重山の夜で見たいもので、何とか撮影したいと機会をうかがっていたものがあります。
それは12月から6月くらいに見られ、今の季節は一日に3時間くらい見ることができる南十字星(みなみじゅうじ座)です。南十字星はその名のとおり南半球でよく観察できる星座ですから、日本で見えるところとなると低緯度地方の八重山・宮古諸島以南のようです。理論上は沖縄本島でも見えるようですが南の空のとても低い位置にあるので、亜熱帯の暖かい海から立ち上がる水蒸気の靄で見ることはかなり難しいようです。南に行けばいくほど南十字星は見かけ上は高い位置に登るので沖縄本島より宮古、宮古より八重山、八重山の中でも一番南の波照間島、波照間島は南十字星が見えることを売りにして天文台が作られていますね。(波照間のイメージが強いのですが石垣島を始め八重山の島ならどこでも南十字星は見られます。)
難しい話はこのくらいにして実際に見に行きます。時間は午後11時半頃、真南に街の明かりが入らない真っ暗な海岸に出ます。持ち物は方位磁石、双眼鏡、カメラ、三脚、懐中電灯くらいのものです。微かな灯りでも無いほうがくっきりと星は見えますので、真っ暗な場所を選んだのですが駐車場から夜の海に降りていくのは若干怖いです。
この日の空は満天の星空と言いたいところですがお目当ての南十字星の出る水平線近くはこの日もやはり靄が出ていました。。。十字の上3つは見えているのですが、下の1個がなかなか靄から出てこないです。頭上は本当に美しい星空が拡がっているのですが水平線すれすれの南十字星はあまりくっきり見えないです。砂浜に腰を下ろしてしばらく待ちます。
南十字星は子どもの頃に読んだ「銀河鉄道の夜」の終点として登場して以来、どんなもんなのかな、と思いつづけたものです。よく読んでいた北杜夫さんの作品(どの作品かは忘れてしまいましたが)では「知名度の割りに案外貧弱な光」といった表現があったような記憶もあります。
疲れてきて砂浜に転がります。時々流れ星が頭上を横切ります。こちらの夜はもう気温が25度くらいあり、たんぱんてーしゃつで砂浜で寝てもちっとも寒くないくらいです。辛抱強く砂浜にコロちゃんのように転がっていると雲の切れ間から南十字星の全貌を見られる瞬間がありました!
どれが南十字星かわかります?私もよくわからんですが、多分これが南十字星です↓
写真の下の白い線は礁縁(サンゴ礁の切れ目みたいなもん)で、ほぼ水平線と同じ高さです。レンズは大体35mm換算で80mmくらいです。一番下の星はとても低い事がよくわかるでしょうか。30秒間露光したのですが、南十字星はほぼ真南にあり、見かけ上動きが速いので30秒くらいでもこのような少し横にぶれているのでしょうかね。
もっと明るいレンズを持っていけば楽しい写真が撮れたのになぁと少し後悔です。いろいろリベンジというか工夫したくなる観察でした。南十字星の全貌はまたすぐ靄に包まれその後は、そのまま真南から少し西の空に沈んでいったようです。
次の条件の良い夜こそは!と思っていましたが、八重山は連休の終わりと同時に梅雨に入ってしまいました。今の時間はちょうど南十字星が一番高く上がっていると思うのですがじっとりとした湿度90%超で水蒸気に囲まれたような梅雨の天気になっています。数少ない機会を物にできるようにしたいと思います。