緊急事態宣言が解除される県も出てきて、長いコロナトンネルの出口が見えてきたような希望もありつつも、ここで気を抜いたらまた元の木阿弥になるような難しい局面です。
いずれにせよ、私が住むところはまだ宣言継続中なので、引き続き外出自粛を継続しており、外出や旅行の自粛でお家にいる時だからこそ、次の旅に思いを馳せて旅にまつわる本を読んでいます。先日は図書館で借りた字ばかりの本を紹介しましたが、今回紹介するのはパラパラページを繰るだけで旅に行きたくなる写真中心の本。
JR東海が主導する京都観光のキャンペーン「そうだ、京都行こう」の軌跡をまとめた本です。
「そうだ、京都行こう」は美しく情緒あふれる京都の各スポットの映像とキャッチコピー、テーマ曲、長塚京三さんの落ち着いたナレーションで、これほど効果的で世間に浸透している旅のキャンペーンは他に無いと思います。
例えば2003年夏のCM動画・舞台は平等院鳳凰堂。↓こんな具合のCMでした。
この時のキャッチコピーは
「皆に等しく幸せな場所とはどういうものだろう。ここがその答えの一つです。
950年前にあった不安な時代に造られました。 さっきからここにいる私からも一言。 「大丈夫」、誰にも楽園は、きっとあります。」
2002~03年はアメリカがイラクを攻撃して自衛隊もイラクに派遣されたり、中国で新型肺炎「SARS」が流行ったり、日本の株価がバブル崩壊後の当時時点で最安値を付けていたりしていた頃。平等院鳳凰堂ができた950年前、CMが流れた2003年、そして2020年現在、そこはかとなく不安な時代という点で通ずるものがあるように思いますし、過去はその不安を乗り越えて今に通じてるはずなので、CMの「大丈夫」という言葉には励まされます。
本書は1993年に始まった「そうだ、京都行こう」キャンペーンのうち2014年までの約20年間のCMの中からCMの舞台となった社寺等とそのキャッチコピーをまとめてあります。
本書に出てくるお寺は上述の平等院をはじめ、清水寺・銀閣寺のようなメジャーな社寺からマイナーなものまで。個人的にお気に入りのお寺は↓の栂尾山高山寺。鳥獣人物戯画で有名なお寺です。
収録されているCM時のキャッチコピーは「大きな夏休みが、小さなお寺で見るかる。それがうれしい。」
高山寺は何回か行きましたが、それぞれの季節に趣がありいつ行っても素晴らしいお寺です。にぎやかな京都市街から少し離れた洛北の山の中にあるお寺なので、人もそう多くなく、木々の緑や虫に囲まれて気持ちがいい境内です。
盛夏のころの参道。緑があふれる中、石が敷き詰められた道と石段を巡ります。
実質的には鎌倉時代の創建。そのころからあまり変わらないのかな。この日は真昼間なので緑の鮮やかさと蝉時雨に包まれていました。夏なので暑いのですが爽涼な気配が漂っています。
晩夏の夕方近くになると泣きだすヒグラシの声も物悲しく趣深いものです。
本の写真にも写っている善財童子の像と秋の紅葉。この像がとてもかわいくて(といっても仏像なのですが)大好きです。
高山寺は鎌倉時代以降の歴史のある国宝・重要文化財がゴロゴロあるようなお寺であり、その中ではこの善財童子は彫刻家・西村虚空(1912-2002)作という比較的新しい作なのですが、その表情や立ち姿は見ているとホッとするような。時代を経た国宝や重文ではないですが、見るものに与える作用は決して引けを取らない素晴らしい作品です。また、高山寺もこの像を国宝の石水院の開け放たれたシンプルな板敷きの間にさりげなく置いてあるという演出(ではないとおもうのですが)が素敵。どの角度から見ても素晴らしい絵になります。
高山寺というのは、どの季節・境内の至る所がはっとするような絵になりますし、また石水亭でボーっとするだけでもほっとするような、不思議なお寺です。
鳥獣人物戯画を作ったり、日本で最古のお茶園があったり、自由闊達で慈愛に満ちた明恵上人以来のお寺の雰囲気があるのかもしれません。
コロナが落ち着いたら、京都をお邪魔したいと思いを馳せつつ、もう少し(に、なってほしいですが、)自粛を頑張ろうと思います。
「青春18きっぷ」はすでに紹介したから、次は”奈良”を紹介しようかな。
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