妻と娘が購入し、家に持ち帰ってきた本。外国の絵本です。
「ぼくたちは みんな 旅をする」ローラ・ノウルズ/文 クリス・マッデン/絵 石川直樹/訳
表紙のイラスト、字体が印象的だったので、私も手にとってみました。
本の中は生涯で旅をする25種類の生き物たちの物語。見開き1ページで1種類ずつ絵本は進みます。
このサイトは海獣記なので、海獣にフォーカスすると、2種類の海獣が出てきます。一つはキタゾウアザラシ。
ものすごくリアルなイラストとはいえない直線的でユーモラスなイラスト。しかしよく描かれていて、このキタゾウアザアザラシのイラストは砂浜に転がっている様子なのですが、しっかりと体が砂にまみれている質感を描いているのです。砂のまみれ具合も体の部位によって異なったり芸が細かい。
ちなみに本書に出てくるもう一種類の海獣はザトウクジラになるですが、ネタバレはしないでおこうと思います。
”旅をする生きもの”なので渡り鳥、鳥類のページも多い。
↑このページはキョクアジサシ。北極~南極を行ったり来たりする、恐ろしい旅をする鳥の話。鳥では日本の鳥島で繁殖するアホウドリやヒマラヤを越えていくインドガンの話も印象的。
旅をするのは、わかりやすい海生生物や鳥類だけではありません。本書には陸上を移動する生物として、甲殻類、昆虫、陸生哺乳類や両生類なども出てきます。
圧倒される数が描かれるクリスマスアカガ二の一週間の旅。旅の終わりに赤い川と青い海が出会う。
旅の距離や住んでいる地域、生きものの分類は異なれど命を懸けて旅をする生きものたちが描かれています。そして文末には「私たちはヒト。ヒトもまた旅を続ける動物なのです。」と締めくくられています。人間もまた旅をする生きもの。生きるための亡命や避難の旅をする人、ビジネスのために旅をする人、アザラシを眺めるために旅をする人。それぞれの旅の意味を大人の読者は自問するきっかけになります。
そして巻末の本書に出てきた生きものたちの旅のまとめが、面白い。
キタゾウアザラシ毎年21,000km、ヨーロッパウナギ約8000km、アメリカイセエビ50km(イセエビが50kmってすごい。東京駅から横浜を通り越して大船駅の辺りです)、シマウマ3200km等々。
乗り物を使わず自分たちの力と工夫で旅をしている生きものたち、繁殖のためだったり、食べ物を得るための生存のためだったり。海生哺乳類、魚類、昆虫、爬虫類等々、生きものの旅を横串を刺して一覧的に見られる最後のこのページは大人向けにとっておきの面白さあふれるページでした。
小学校低学年の我が娘には多分難しい内容だと思われます。小学校中学年~高学年程度なら知識としての本の中身は理解できるか…。ただ出てくる生きものたちの旅と自分の旅を重ねて「旅とは?」とか考え出してみるとある程度の人生経験が必要で、そういう面ではむしろ大人のほうが楽しめる本だと思います。
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