私の趣味の一つが、料理。それも何が出てくるかよくわからない外来語・オサレ料理ではなく、チャーハンや焼きそば、カレーとか餃子とか、極日常的なものを追求するのが好きで、家でも作っております。
作るからにはやはり細部や道具には無駄にこだわりたく、形から入るのは大事ということで中華鍋を探しに香港にいったり、先日照会したとおり、ドイツ産まれのクソ重い鉄製フライパンを買ったりしています。
レシピ本や料理本を見るのも結構好きで、書店でもレシピ本やグルメ本コーナーに入ることもしばしば。先日も本屋で料理本コーナーを眺めていると、タイトルでピンと来る本がありました。
その名も「男のチャーハン道」(土屋 敦)
いかにも私好みな名前の本。枕の「男の」と、締めの「道」が良い。そしてその間に挟まるのは大好きなチャーハン。見すごすわけにはいきません。
早速、手に取って中を読んでみたのですが、、、
本書内容に入る前の「プロローグのタイトル」が既に良い!
一発で心を持っていかれます。
そのタイトルは、、、
プロローグ ダメ人間からの脱却
チャーハンの本のはずなんですけどね、、、(^^)
この本は、言ってしまえばチャーハンの材料や調理道具、調理方法を筆者なりに検証、トライ&エラーを繰り返し、理想のチャーハン像を描いていく(だけの)本なのですが、その出発点ともいえるプロローグのタイトルから「ダメ人間からの脱却」なのです。
私に向けられたかのようなプロローグタイトル。これはもう読むしかないで、と腹を括ります。(なぜこのプロローグタイトルなのかは、本書で確認ください)
そしてプロローグを読み進めていくと、引用され出てきたのがこの人物!↓
引用されている漫画は、日本の料理漫画の草分け的存在である「美味しんぼ」4巻の一話目に掲載されている美味しんぼの最初期のエピソードですね。
このエピソードは、中華鍋の中でイジイジかき回してチャーハンを作って、大事な場面で失敗した若い料理人(王さん)を山岡さんが指導して、最後は素晴らしいチャーハンを作って大逆転、めでたしめでたしに至る、というまさに料理漫画の王道を行く話です。
このチャーハン話は私も大学の研究室にやたら置いてあった美味しんぼの単行本で読んで以来、とても好きなエピソードです。
山岡さんが発する
という言葉が印象的で、私がいまだに中華鍋でチャーハンを使うとき、どうしてもこの美味しんぼのこのエピソードが頭をよぎってしまうのです。気分だけは炎の主人のつもりですが・・・。
そしてこのような想いは、「男のチャーハン道」の著者の土屋敦氏も同様に抱いていたようで、本書の出発点はこの美味しんぼの山岡士郎です。いやー、、それだけ美味しんぼのこのエピソードは強烈なのです。
さて、美味しんぼから出発した土屋氏は、家庭用の台所設備を前提としつつも、しかし通販で一般人が購入できる器具は購入し、チャーハンの歴史を紐解き、米、卵、塩、油といった食材のベストミックスを探し、調理過程を確認しながら、チャーハンの核心に迫っていきます。これを家庭用の器材でやろうとするのが素晴らしい。
この核心に迫る過程もなるべく再現性を高めるべく、定量的にやっていこうとする姿勢はいかにも男!でチャーハン道と呼ぶのにふさわしい。このような尊ぶべき過剰な無駄が好きなんです、男は。
「無駄」といえば、、、土屋氏がたどり着いたレシピが本書の巻末掲載されており、これはわずか数ページです。本書は全部で200ページ超の本。土屋氏の提唱するレシピを知るだけなら、巻末だけさっと読めばわかるのですが、ここに至る過程を楽しめるか、その過程を「無駄」として切り捨てるか、当然後者の方は「本」としては読むべきではない本です。
土屋氏のたどり着いたレシピがどのようなものか、山岡士郎の言う「炎の主人」になったのか、もちろんこのサイトに書くわけにはいきませんが、この「男のチャーハン道」は出版元の日経新聞社のサイトで一部公表されています。結構レシピの核心に近いところが引用されています。こんな具合で詳細なこだわりと薀蓄をはらみながら本書は進むのです。
と、熱く紹介しておきながら、実は私はまだ土屋氏のレシピを試していなかったのです。
それは本書の中でも推奨されていたある装備(道具)が我が家になかったから・・・。しかしこの道具は届き、時は満ちました。チャーハンを作ってみようと思います。が、次回はまずその道具を紹介しようかなと思います。
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