【海獣本】「世界で一番美しいアシカ・アザラシ図鑑(水口 博也 著, 編集)」を購入&感想

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2021年10月21日に「世界で一番美しいアシカ・アザラシ図鑑(水口 博也 著, 編集)」が発売されました!久しぶりのアシカ・アザラシの図鑑です。アザラシ・アシカたちを網羅的に掲載し、かつこれらに対象を絞った一般向け図鑑は、2010年発売の「海獣図鑑(荒井一利=文 田中豊美=画)」以来かな?

私は発売日の数日後に近所の書店で購入いたしました。近所のTSUTAYA閉店の寂しさをなるべく繰り返したくないため、我が家の徒歩圏唯一の書店で購入しました。幸いこの書店は平日でもお客さんはそれなりに入っていますし、土日はもっと混雑しているのでしばらく安泰と信じたいところです。

さて、それはともかく本書の中身や感想などに移っていきたいと思います。

なお、結論から申し上げますが、私の中で本書は「海獣ファンなら買って損はない、、、むしろ買うべき本」という位置づけになっています。ただその一方で、私にとって本書に対する先入観~購入して最初に開いた第一印象はよくなかったのも事実。その辺の印象の変化も踏まえて紹介していきたいと思います。

購入前の印象~購入後さっと眺めたくらいまでの印象はよくなかったが、、、

見出しに書いたとおり、購入前から購入直後くらいまでは結構微妙な気分で本書を見ていました。。。なぜそんなネガティブだったか。以下のような理由です。

「世界で一番美しいアシカ・アザラシ図鑑」というタイトルを初めて見たとき「”世界一美しい”って何か安直だなぁ」という印象を持った。アマゾンで検索するとわかるとおり「世界で一番美しい〇〇図鑑」はたくさん出ている昨今。〇〇に入るのは「元素」「馬」「サル」「包丁」「犬」、、、きりがないです。編著者の水口氏はクジラやイルカ類の写真の大家で、ほかにも「クジラ&イルカ」「シャチ」の世界で一番美しいシリーズ図鑑を出されています。水口氏の写真の本なら「もうちっと硬派なタイトルにしては」と偉そうにも思ってしまいました。

②使用されている写真は確かに素晴らしいが、掲載写真は水口氏が撮影された写真のほか、画像データのサブスクサービスのshutterstock.comagefotostockのライセンス写真が結構使われているインターネットのオンラインサービスを介して集めた写真が多いなら、自分でもこれらのサイトで画像を買うことができてしまいますし、(言葉は悪いのですが)ネット上の写真を寄せ集めて本を出すとはうまくやるなー、と思ってしまいました。


↑のようにShutterstock.comのURLが付いているものが結構ある。

③さらに言えば、よく考えれば当たり前の話なのですが、それぞれの種の基礎的な分布情報や生態的な情報は、そうそう昔の情報から変化することもないですし、これらの情報は凡そ日英版のwikipediaのページを見ればたいていは載っていますので、そこまで新しい情報はないるし、写真も何ならgoogleのイメージ検索でそれなりに写真は集められてしまいます。

要するにこれらの情報なら、図鑑として改めて出版するまでもないのでは、、、と第一印象では思ってしまったのです。

しかし、よくよく考えると、これは古臭い価値観で、これからの時代の少なくとも生物の図鑑を作るうえでは非常に理にかなった新しい時代の図鑑の作り方と思うようになりました。

2020年代の野生生物写真は生息地現地の写真家がキーになってほしい

画像データのサブスクサービスの写真を集めて図鑑を作るのは悪いことなのか?と考えたとき、非常に理に適っているというか、写真を手軽に集められる出版社側だけではなく、鰭脚類の保全にも図鑑を読む読者側にも理があるように思いました。

まずアザラシ・アジカ類は世界各地に分布しており、一人で全世界の鰭脚類の素晴らしい写真を撮るのには限界があるという現実的な問題があります。写真はデジタル化が進み、機材も高性能の物が廉価で出回るようになり、ハイアマチュアでも十分な機材を入手できる時代になりました。となると、地元の動物は地元の写真家が長年撮影し続けたものは、ぴよっとやってきた外国の大御所写真家よりいい写真を撮るであろうことも期待できます。そしてその写真をサブスクサービスなどで販売することが、その地域に暮らす写真家がお金を回す原動力にもなり、さらに対象生物の保全の資金や動機にもなりうる。なぜなら長年撮り続けるには野生動物を保全しなければならず、地域の方がそのような動きをとるのは心強いでしょう。これは非常に素晴らしいことのように思います。

逆に言えば一生に何回かしか来ない外国の方は、一度来てしまえば、後は野となれ山となれ、、、とまでは言わないけども、現地の野生動物を守る原動力としては弱いことは想像できます。

翻ってこの図鑑を拝見すると、サブスクで購入したであろう素晴らしい現地写真家の写真がたくさんあり、まさに地球の反対側のアシカの生息地で奮闘している現地のカメラマンの写真かな、と思うとわくわくします。異国の私のような読者も図鑑を購入することで、間接的にもそのような写真家を応援できるというのは悪くないように思います。

本書の最大の魅力はアザラシ・アシカの写真家と研究者の激熱なコラム

そして本書の最大の魅力は主編者の水口氏や写真提供している海外の写真家の臨場感のあるコラムと学術研究の第一線で活躍している鰭脚類の研究者のコラムです。

どちらも熱い内容で、世界中の鰭脚マニア(写真家・研究者)がそれぞれの立場で情熱をもって鰭脚類を追いかける臨場感とその愛情をたーっぷりとディープに(日本語で)味わえる本。

それは確かにこの本の唯一無二の価値で単なる写真と生態情報の寄せ集めだけにとどまらない点で出版された価値といっても過言ではないと思いました。


目次がこんな感じ。熱い内容なのが目次だけでも伝わるのではないかと。


セイウチの写真家コラム。

『図鑑』というと基礎的な生態写真と情報の集まりのように感じるので「wikipediaでいいんじゃね?」となってしまうように思いますが、本書は『世界中のアシカ・アザラシファンの自慢の写真や熱い想いが詰まった寄稿集(図鑑っぽい内容もあるよ)くらいに見るのが最も素直で、体を表しているように思います。


↑研究者(このページは東大の宮崎先生)のコラム。普段は学術論文を書いている研究者の方が(一応は)一般向けの本で研究の内容を書くのはなかなか珍しいと思います。一般向けとはいえ、難しい内容のコラムもあるのだけど(^^;


進化の系統樹や鰭脚類の頭骨図鑑。書かれている内容はガチです。

マグロをとるガラパゴスアシカの話を中心にガラパゴスアシカの生態を写真家が寄稿しています。

この本は写真家と研究者の合作本と言っても過言ではないくらいアカデミックなコラムも写真家としての感性あふれるコラムも読めるのが楽しい。

これらの珠玉のコラムを少しでも多くの人に読んでもらうには、最初に「安直だな」と思った本のタイトルも、戦略の一つとしては正しいのかもしれません。

ただですね、、、本書の扉に使われている1番目の写真と、2番目の写真(2~3ページにわたって見開きいっぱい)がアシカやアザラシではなく、セイウチの写真なのは、なかなか面白かったです。セイウチも出てくるので「世界で一番美しい鰭脚類図鑑」が正しいタイトルなのかも?ただタイトルはアシカ・アザラシのほうが売れそうですしね。

 

いずれにせよ、アザラシやアシカが好きな方にはお勧めできる本です。上にも書きましたが単なる図鑑ではなく「世界中のアシカ・アザラシファンの自慢の写真や熱い想いが詰まった寄稿集」といった目線でご購入いただくのが正しいと思います(^^)

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