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北海道におけるアザラシによる漁業被害のデータ(2022年版)

アザラシが好きな身としては複雑な思いがありますが、ゴマフアザラシやゼニガタアザラシは北海道で漁業被害を出している種でもあり、一部駆除も始まっている種です。

そして、北海道におけるアザラシを含む海獣類による漁業被害について、2022年8月に北海道の水産部局から発表されていました。

こちらの北海道庁のサイト海獣類による漁業被害状況(pdfファイル)(令和4年8月24日更新版)を見ることができます。2021年度の集計データが取りまとまって、発表されたのではないかと推測します。

このpdfファイルは地名と海獣の種名と被害額の数字の表のみで、余計な解説は一切なし。解釈は読み手側に委ねられている硬派なスタイル。しかし、北海道のアザラシが好きな身としては、複雑な思いを抱きながら眺めているうちに、長時間が経ってしまう内容です。

一昨年も↓こちら↓でこの漁業被害データを紹介しました。

一昨年のエントリーでは、2019年の被害状況が最新だったのですが、2019年くらいからアザラシを含む海獣類の漁業被害額が大幅に減少(つまり漁業被害が減少していた)し、さらに昨年はさらに減少していて、衝撃を受け続けていたのですが、今後も同様に減少傾向が続くのか非常に興味深いものです。アザラシと人間の共存の一つの指標的な数字ですからね。

さて、2022年版(つまり2021年の統計データが最新)を見ていきましょう。

海獣類(トド、オットセイ、アザラシ)による漁業被害状況(2021年まで年度別データ)

Hokkaido Government Opendata CC-BY4.0

2016年まで海獣類による漁業被害の総額は20~25億円前後をうろうろしていましたが、2017年から減少傾向にあり2020年に10億円を切る7億円台入りしていました。しかし2021年は久しぶりに増加に転じ、9億5000万円ほどに。

特にトドとオットセイの被害額の増加が著しいですが、アザラシの被害額は微減傾向が続いています。

アザラシの被害額でも、漁網等を破る間接被害額が2020年比で約半分以下に。他方、間接被害は増加に転じています。漁具の改良が進んでいる、アザラシが入り込まないような漁法が開発されているのかもしれませんね。

(※アザラシ目線で考えると、アザラシは餌として魚を狙っているわけなので、魚を食べるのが”直接被害”、漁具を壊すのが”間接被害”とイメージしてしまいますが、言葉は逆で、漁具被害が”直接被害”で、魚の食害は”間接被害”になっているので留意ください)

2021年の北海道の各地方ごとに漁業被害情報をまとめたデータ

Hokkaido Government Opendata CC-BY4.0

宗谷…北海道最北地域。全体的に海獣被害が大きい。被害額はこれまでは道内1位でしたが、石狩に抜かれました。アザラシに関して言えばすべて間接被害(食害被害)で漁具への被害(直接被害)はゼロというのも特異的かもしれません。

留萌…北海道日本海側で天売島焼尻島ある地域。被害額が大きい地域です。

石狩…札幌などが含まれる日本海側地域です。海獣の漁業被害がトドのみ。トドだけで海獣類による被害額全道1位の地域になっています。

後志…小樽や積丹半島の辺りで、北海道の中部~南部辺りになります。トドやオットセイの被害が大きい。オットセイ被害総額の6割くらいはは後志に集中してますね。アザラシ被害額はオットセイやトドに比べてとても少ない。

檜山・渡島・胆振…北海道の南部地域。海獣の被害額も小さい。特にアザラシの被害額は0ですね。

日高…北海道南部でゴマフアザラシのイメージはない地域ですが、ゼニガタアザラシの生息地として著名な襟裳岬がある地域。漁業が比較的盛ん&魚種がアザラシが食べるのとバッティング&定住するゼニガタアザラシということで、アザラシの被害額が大きいのかなと思いました。トドやオットセイはなし。

十勝…ゼニガタアザラシ定住地がある日高地域と釧路地域の中間地点!という感じで、被害額も相応ですね。

釧路ゼニガタアザラシ定住地の大黒島があり、北海道太平洋岸から北方領土にかけて徐々にゴマフアザラシの影も濃くなるイメージです。やはりそれなりにアザラシの被害額が大きいですね。

根室…アザラシが定住する野付湾風蓮湖、また知床半島南側を抱える地域。アザラシの影も濃くなりアザラシ被害額は宗谷に次ぐ全道第2位。

オホーツクとっかりセンターがある紋別網走湖能取岬などがある網走、またサロマ湖知床半島北側などが含まれアザラシが濃そうな地域ですが、海獣類による漁業被害額は少ないのは相変わらず。オホーツク地域の漁業は海獣とバッティングするような漁業形態ではないのか、海獣たちが食べる量など気にならないほど漁業資源が豊富なのか、、、。また流氷が押し寄せている間は漁には出られないのもこの地域の特性でそのあたりの影響もあるのかも。

2021年の振興局別にアザラシによる漁業被害状況の推移をまとめたデータ

Hokkaido Government Opendata CC-BY4.0

被害額の大きい宗谷地方は相変わらず、被害額も大きいのですが、微減傾向にはあるようです。
留萌地方は2020年比で2倍!なかなか変動が激しいです。
一方で後志地方は著しい減少傾向で、2012年以降、最低の被害額。100万円にすら届いていません。
ゼニガタアザラシの日高・十勝・釧路地方も減少傾向が継続。根室地方は横ばいですね。
気になったのがオホーツク地方で、他地域に比べれば被害総額は小さいのですが、昨年比で10倍以上の被害額となり、2012年以降最高額を記録しています。この傾向が続くのか…。

単年ごとに一喜一憂しても仕方ないですし、ある程度の長期的なスパンでデータを見ることが大事だと思いますが、やはり気になりますね。気候変動の影響か、流氷の動きもかわりつつあったり、北海道の海で獲れる魚種も変わってきたりなどいろいろ気になる動きもあり、目が離せないデータです。

管理人
管理人

北海道ではアザラシをはじめとする海獣類が漁業被害を出しているという事実は、肯定的な感情でアザラシや海獣類を追いかける人も知っておくべきことだと私は思います。

※私は人間とアザラシ・海獣類の共存を第一義的に願うものですし、また科学的根拠に基づいた海獣類の個体数管理や持続的な利用も支持します。よって、殺傷や毛皮・肉の利用を認めない原理的な保護論者ではありません。

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