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益子参考館で、イームズのラウンジチェアとメキシコの皮椅子にやられる

先回は我が家の「鉄と革の椅子」を紹介しました。

この鉄と革の椅子のルーツとなったのが陶芸家の濱田庄司氏がメキシコから持って帰ってきた「皮椅子」。このメキシコの皮椅子を含め、濱田氏のコレクションが展示されている益子参考館にずっと行きたいと思っていたのですが、ようやく行くことができたのでその様子を紹介したいと思います。

益子参考館は「陶芸家 濱田庄司が自ら参考とした品々を、広く一般の人々にも「参考」にしてほしい」との意図のもとに、開設された美術館で、濱田庄司の自邸・工房の一部を活用し、公開されています。

濱田氏は柳宗悦氏、河井寛次郎氏らと民藝運動を創始し、この運動が柳宗悦氏の息子の柳宗理氏などに引き継がれ、現在の日本の家具や工業製品などあらゆる生活の場のデザインに大きな影響を与えたと思いますし、この先駆者たちの思想や残した物は非常に興味深い。陶芸分野で言えば濱田氏がいなかったら日本の各地の陶芸は廃れてしまって、これほど多用な手仕事による陶器やそれを産み出す各地の窯は残らなかったのだろうなとさえ思います。

能書きはこのくらいにして、ご当地の益子焼や沖縄のやちむんにも大きな影響与えた濱田氏の作品やコレクション、自宅や仕事場をずっと見てみたかったのです。

実は2015年に益子を訪れてここでも紹介しているのですが、改めて気になることもあり再訪してきました。

さて、益子参考館に入館し、よく手入れされた庭木の通路を通って大きな突き当たる茅葺きの建物が、濱田庄司氏の別邸であった4号館。

古い民家を移築した建築物で、建物自体が濱田氏のコレクションで、中も濱田氏が手が入っている建物。


昔の庄屋の建物だったようですが、なんとも豪華なものです。

そしてこちらの茅葺きの4号館の中においてあったのがこちらの椅子!
イームズラウンジチェア。イームズといえばこちらのラウンジチェアやシェルチェアで有名なアメリカのミッドセンチュリー家具界の巨匠。(日本では粗悪なコピー製品が売られまくっている現状はどうにかならないものだろうか・・・)

その代表作の椅子を日本の民藝運動の大家である濱田庄司が愛用していたというのがなんとも面白いものです。イームズが家具を作る思想も民藝運動の思想も「大衆が使うもの(あるいは使っているもの)を大切にする」という精神があり、国は違えど根底で通ずる同志なのかも、と思いました。

そしてこの益子参考館のイームズのラウンジチェアは思いっきり日本の古い建築の中にいるのに、すっかり馴染んでいる佇まい。敷いてあるラグもアメリカのものでもなく日本のものでもなく、また違う国の民芸品のようにも見えますが、このラグも含め、日本家屋内にまとまっていて素敵な雰囲気。

ラウンジチェアの傍らにはこの椅子に腰掛ける濱田氏の写真がありました。

傍らには濱田氏とこの椅子にまつわるお話が濱田氏の著作「無盡蔵」より引用されて掲示されていました。濱田氏がチャールズ・イームズとハンス・ウェグナーを高く評価していたこと、ラウンジチェアはサンフランシスコのハーマンミラーの店で濱田氏が2割引で購入したこと、その旨をお礼伝えるべく濱田氏がイームズに電話をかけたこと、濱田氏の電話に対しイームズからはサンフランシスコの注文を取り消して、自分の工房のものを5割引で濱田氏に送ったことなどが紹介されていました。「巨匠たち本人同士でやり取りしていたのかよ、スゲーなー、、、」としか思えないです。

そして「(当時としては)アメリカの最新のこの椅子が古い日本の民家によく受け応えてくれて感心した」と濱田氏は著作で記しています。まさにその感心ポイントが益子参考館で再現されていて↑の写真なのです。我が家で真似するとか、そういったレベルのものではないですが、痺れました。

濱田庄司氏のエッセイ。「無盡蔵」

イームズのラウンジチェア

イームズ ラウンジチェア&オットマン ウォールナット【Herman Miller ハーマンミラー 正規品】

良いモノを見た&勉強した、という気分で4号館を後にします。

さて、続いて訪れたのが、濱田氏が集めた西洋や中南米の民芸品が展示されている2号館。
栃木県産の大谷石の石蔵。

益子参考館の公式サイト(http://www.mashiko-sankokan.net/shoji.html)によると、濱田氏の収集品は

自分の作品が負けたと感じたときの記念として、濱田が購入し蒐集した諸品です。これらは、濱田の眼を楽しませ、刺激し、制作の糧となったもので、身辺に間近く置いて親しんだものでした。益子参考館は、濱田がそれらの品々から享受した喜びと思慮を、広く工芸家および一般の愛好者と共にしたい、また自身が参考としたものを一般の人々にも「参考」にしてほしい、との願いをもって設立されました。

とのことですので、この2号館の中にあるものは濱田氏が「負けた」と認めたものなのでしょう。

そんな中にさらっと置かれていたのがメキシコの皮椅子。

入口から見て左側と右側の壁際に一脚ずつ、置かれてありました。

本当に造作なく置かれていますので、悪意のある来館者が座ろうと思えば座れてしまう(^^;

↑の椅子とは反対側の壁にいるもう一脚の皮椅子↓

右腿を載せる部分の刻印?が一個目の椅子と異なります。

皮椅子も濱田氏が負けたと思って持ち帰ったのでしょうか。「負けた」と認めると持ち帰るという考えが面白いですね。そしてまさに”収集品を愛好者と共にして、参考にして”作られたのがstarnetさんの「鉄と革の椅子」なんだなと。そんな思想の流れを持つ品を我が家において置けるのは嬉しいものです。我が家の”皮椅子”がこちら↓

販売元のstarnetさんについては一個前のエントリーを参照ください。↓

他にも面白い陶器の小物も置いてあります。

こちらは濱田氏自身の作品や親交のあった陶芸家たちの作品。
バーナード・リーチ、河井寛次郎と錚々たる名前が。。。

沖縄のやちむんの巨匠・金城次郎氏は濱田庄司氏の助手も務めたこともあったようで、二人の作品も並んで置いてありました。

沖縄のやちむんのやさしい表情がとても素敵。

参考館の門を出て振り返って撮った一枚。
こちらの門も古いものを移築したものだそうです。出入り口もやっぱり隙がない。

写真で紹介した以外にも濱田氏の作陶の仕事場や窯も見学して、いろいろなものを見て、満腹気分で戻ってまいりました。

益子参考館、出来れば静かな平日に訪れてゆっくりしたいところですが、益子の春秋の年2回の陶器市で陶器を漁るついでに立ち寄るのも一興かと。ただ陶器市の時は混雑するだろうな、と思います。

参考館はコレクションも素晴らしいですが館内の緑もきれいです。古い濱田氏の別邸から見ていると心が洗われるような。新緑や紅葉の頃もきれいなのでしょう。いつか見てみたいものです。

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