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「アザラシ猟反対」は正しいのか?私がアザラシ猟反対活動に加担しない理由

毎年春先になると、湧いて出てくるカナダのタテゴトアザラシ猟反対の方々。

カナダのアザラシ猟については何回かこのブログでも扱ってきました(たとえばこちら)が、この猟について超簡単におさらいすると、カナダのニューファンドランド島周辺等でタテゴトアザラシを捕獲するものです。これに対し、グリーンピース、IFAW、PETAといったいわゆる「動物保護団体」が猟の中止を求めています。

日本国内でもカナダにアザラシ猟を中止するように求める署名活動を行っているサイトもあり、当サイトにもアザラシ猟の反対運動への協力をメールなどで求められたこともあります。

海獣、特にアザラシが好きで、このようなサイトを運営していると、時折「カナダのアザラシ猟中止に向けて協力してほしい」的なコンタクトがあるので、私のアザラシ猟に対する思いやスタンスを改めて書いておこうと思います。

カナダのアザラシ猟に対する私のスタンス

まず、私は、カナダのアザラシ猟そのものに反対をするスタンスではありません。よって、このサイトでもカナダのアザラシ猟への反対活動を行ったり、その活動に協力するつもりはありません。

私はこの猟の是非を判断する唯一の基準は、タテゴトアザラシが減少し、絶滅に向かっているか否かという一点のみと考えております。タテゴトアザラシが絶滅に向かうほど減っているという客観的なデータがあれば猟を含めタテゴトアザラシの数を減らす行為には反対しますが、今のところ、そのようなデータを私は把握しておりません。

さらに、アザラシ猟反対派が唱える猟に反対する理由に、私を納得させるものは今のところありません。
猟時における画像が凄惨だということで、感情論のみが反対の根拠になっていることも見受けられますが、猟法が凄惨であるという理由だけで猟そのものに反対とする、というのには私は同調しません。仮に猟法に問題があるなら、アザラシ猟の中止ではなく、猟法の改善を求めればいいだけの話です。(後述しますが、この猟法についても私は問題ないと考えます。)

そもそもタテゴトアザラシは増加傾向&絶滅のおそれは極めて低い状態にある

世界最大の自然環境保護団体・国際自然保護連合(IUCN)が絶滅のおそれのある生物をまとめたリスト、いわゆる「レッドリスト」ですが、その中でもタテゴトアザラシ(Harp Seal)は最も絶滅のおそれの低いカテゴリーである「Least Concern (LC) 「低懸念」」種に分類されています。それどころか個体数は増加傾向(↑Increasing↑)にあるとすら書かれています。以下がレッドリストのスクリーンショットとIUCNレッドリストサイトのタテゴトアザラシページへのリンク先です。

IUCNレッドリストのタテゴトアザラシのページ(2022年6月18日閲覧)
The IUCN Red List of Threatened Species
Established in 1964, the IUCN Red List of Threatened Species has evolved to beco...

正直なところ、LCカテゴリに分類される種について、毛皮などを含めて人間が活用する行為に反対する必要はないでしょう。

カナダのタテゴトアザラシは毎年数十万頭単位で猟が出来るくらいの個体数がおり、増加するアザラシの「食事」によって漁業の対象魚類が減少しているという話もありますし、カナダには猟をするだけの種々の事情(猟によって収入を得ている猟師さん等)もあるでしょうから、異国から事情がよく分からない者が異議を唱えるのには相当慎重になるべき、と考えます。

アザラシ猟の猟法は本当に残酷なのか?見た目に惑わされず、本質を見たい

アザラシ猟自体は銃殺、もしくは金属が先に着いた棒(かぎさお・ハカピック)で殴り殺して行うようです。銃はともかく棒による殴り殺しが動物虐待ではないか!という理由で反対される方も多いようです。確かに人間の目から見れば凄惨な光景です。
でもアザラシ猟を行っている(行っていた?)ノルウェーの大使館のサイト(http://www.norway.or.jp/policy/environment/marine/sealing.htm)には「アザラシは、速やかに痛みを伴わない方法で殺すことが規定されています。猟の道具で許可されているのは、ライフル銃と特別なかぎざおのみです。成長したアザラシはライフルで、子アザラシはライフルまたはかぎざおを用いて殺します。かぎざおによる猟は原始的に見えますが、動物を速やかに殺すには最も適しています。」とあります。
よってカギサオによるアザラシを殴り殺す一見凄惨な猟法も私は問題は無いと思います。

”この猟法がどうしても嫌”としても、いきなりアザラシ猟中止ではなく、まずは猟法の変更を求めるべきではないでしょうか。

「アザラシが生きたまま皮がはがされている」という主張は怪しいので要注意

カナダ連邦漁業海洋省も「Canadian Seal Hunt – Myths and Realities(カナダのアザラシ猟-神話と現実)」というサイトを掲載しております。

猟の反対派が猟法が悲惨とする根拠としてよく言われる「生きたまま皮を剥いでいる」という主張が真っ向から粉砕されており、その猟法も「人道的」であると書かれています。カナダ政府の言い分も100%正しいかどうか判断できるほどカナダのアザラシ猟事情に詳しいわけではないですが、反対派の意見ばかりではなく猟をする側の情報も知って双方を鑑みて判断するべきでしょう。とりあえず機械翻訳でも良いと思いますが、上記カナダの政府サイトは一見の価値ありです。

繰り返しますが、猟法に問題があると考えるなら上記サイトの内容に対し、反対の根拠を述べ、猟の中止ではなく、問題の無い猟法を提示するのが筋と思います。

アザラシ猟自体は一般的な日本人から見ると、見た目が凄惨なので残虐な猟だ!と直感で思うのも分かりますが、猟の方法については上記の通りノルウェーやカナダ政府のような記載もあります。実は他の動物の利用のほうが非人道的かもしれませんし、どっちが残酷か比べはこのブログの主旨とは関係ないですが、「よくわからないけど見た目が悲惨そうだから」という理由でアザラシ猟に反対するのは安易でしょう。猟法に納得できない、問題があると考えるなら、猟法の対案を反対派は出すべきと思います。どんな猟法なら納得するのかは私もわかりませんが。。。

「アザラシ猟による経済活動は、他の産業に比べて小さいからやめても良いでしょ」という主張もおかしい

またアザラシ猟自体の経済規模の話に関して、「アザラシ猟がもたらす産業規模は国内他産業や漁業に比して小さい(からやめても影響は少ない)」「アザラシ猟による収入は猟師さんの年間の収入の数%だから無くなっても大したことない。」という主張を見たことがあります。

とんでもない主張です。

アザラシ猟はカナダでは合法的な経済活動です。この話、例えるならば「日本におけるある製品の製造は日本の国内他産業に比して経済規模が小さいから日本でその製品作るのはやめたら」とか「Aさんの(合法な)副業収入はAさんの本業の年間収入の数%だから副業はやめるべき」と他国の人から言われているようなもんです。

他国の人が経済規模や収入面に占める割合から、その産業や収入を閉ざそうとすることは、自国や自分の身に置き換えると、理不尽さがよく実感できると思います。

「気候変動による影響が深刻だからアザラシ猟をやめるべき」という主張は問題の本質をずらしているので認められない

近年では「気候変動の影響か、タテゴトアザラシの出産シーズンになると出産・育児の場である氷が解けてしまい、育児が出来なくなっている。なのでアザラシ猟をやっている場合ではない。」という主張。気候変動問題は確かに大変ですが、アザラシ猟の是非とは本来無関係。気候変動が原因でアザラシが減っていくならアザラシ猟の実施の可否にかかわらず、もっと大きな問題でアザラシは減って絶滅に向かうわけです。アザラシ猟の是非の前に気候変動問題をどうにかするのが筋でしょう。

なお、カナダのアザラシ猟やあるいは観光がおこなわれるカナダ東岸のニューファンドランド島・マドレーヌ諸島は下図(IUCNのタテゴトアザラシの分布図)の赤丸の辺りになります。タテゴトアザラシの分布の中でも最南限に近いことが分かります。気候変動の影響(特に気温上昇)の影響は受けやすい生息地であることが推測されます。(まぁ逆に言えばタテゴトアザラシという種全体でいえばニューファンドランド島・マドレーヌ諸島以北からグリーンランド北部付近、北欧~ロシア北部まで分布している非常に分布範囲が広い種といえる。)

タテゴトアザラシ分布図(IUCN Redlist より https://www.iucnredlist.org/ja/species/41671/45231087)

感情論でアザラシ猟に反対することについて

「感情論だけで反対するのが何が悪いのか」、「かわいいアザラシが殺されているのは無条件で受け入れがたい」といった方もいるかと思います。いろいろな考えがあると思いますし、その感情自体は否定しませんが、かといって感情論を根拠にしたアザラシ猟を辞めさせる活動、さらにそれを他人に対して同調を求める活動には私は賛同はしません。

アザラシに対する感情論だけで他人(例えばカナダの猟師さん)を悪人のような扱いをしたり、猟師さんの収入を脅かしたりすることは、私にはできませんので。

毛皮のようなゼイタク品が無くても人間は生きていけるじゃないか、というのも分かりますが、毛皮はダメと線引きをするのもやはり感情論な気がします。いろいろな動物を殺しているのは日本の食糧や服飾、各種産業でも同じでしょうし。革靴は?食肉は?魚を食べるのは?プランクトンを食べるのは?植物を食べるのは・・・?と切りがないです。

何かの生きものを殺さないと生きていけないのは人間として命をつなぐ以上避けては通れないものですし、そこに明確な基準を引き他人にも強要させることは無理と思います。感情や価値観などの諸々の感情の押し付けは良くないと思うのです。

私自身は以上のような考えですが、ヨーロッパでは違うようで、アザラシ猟が残酷という理由で毛皮の禁輸法案を可決しようとしています。(http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20090417-OYT1T01122.htm)記事中には「欧州でのアザラシ禁輸の動きは、「かわいそう」という世論に突き動かされており、」とあります。これに対し「カナダ政府は、アザラシ猟反対派の主張が「感情論ばかりで根拠がない」(ゲイル・シェイ漁業海洋相)とし、禁輸で捕獲量が減ると、アザラシが増えすぎて生態系破壊につながると警告している。」としております。この記事にある情報が全て真実なら、私はカナダ政府の主張のほうに理があると思います。

まとめ~当サイトのアザラシ猟に対するスタンス~

これまでの情報から当方のスタンスをまとめると、私はアザラシ猟を積極的に推進したい、というほど強い動機を持っているわけでもないのですが、「アザラシ猟の中止を求める」ほどの動機もないので、積極的に猟に反対するような活動には加わりません。

上の方で書いた繰り返しになりますが、私が考えるアザラシ猟を中止するかしないかの判断基準はいたってシンプルで、対象種のアザラシの数の増減傾向のみ。猟であれ、観光利用であれ、その他の要因であれ、絶滅に向かっていると判断されるなら、アザラシ猟に反対、安定的な個体数が維持できているなら、猟を含めて持続可能な利用はOKと思います。

そして中立、、よりはいわゆる”保護団体”側に近いスタンスのIUCN(IUCNは世界最大の環境保護団体と言ってもいいでしょう)のレッドリストで、今のところタテゴトアザラシはLCカテゴリに分類され、個体数は増加傾向とされている状況であり、狩猟することそのものに問題はないように思います。

備考)カナダ漁業海洋省のサイトはアザラシ猟の情報がたくさん掲載されております。
たとえば「Seals and Sealing in Canada (カナダのアザラシとアザラシ猟)」カナダのアザラシとアザラシ猟を紹介するページです。私もすべてには目を通せていませんがカナダの中でもこのアザラシ猟は大きな関心が持たれているのだなと思いました。興味のある方はぜひ読んでみてください。

コメント

  1. 「血を模した赤い絵具を塗って横たわる」

    スペインはバルセロナのカナダ商務官事務所前で3月15日、動物の権利擁護団体アニマルナチュラリス(AnimalNaturalis)のメンバーが、半裸の体に血を模した赤い絵具を塗って、カナダのアザラシ猟に抗議したそうです   カナダのアザラシ猟は毎年、春先に行なわれる

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