世間的に遠出しにくい5月の大型連休です。今年最初のエントリーでは、今年は十数年ぶりに天売島を訪れて、アザラシや海鳥を見たいと思っていたのですが、北海道の離島の5自治体からは共同で来島自粛要請が出されました。(↓私が行きたい天売島・焼尻島を抱える羽幌町のサイト)
5月の後半の頃に天売島行こうかなと思っていたのですが、おそらく難しいでしょう。離島の医療体制、本土以上に進行している高齢化を考えるとこの来島を控える要請は全く正しい。なので、当面は私も訪問は諦めるのですが、離島の観光業や交通機関にとっては大打撃でしょうし、離島に暮らす高齢のじいさんやばあさんに会いに行こうと思っていた家族の方には断腸の思いだろうな…。
旅に出たい欲求が溜まっていたのですが、無理に旅行しても心の底から楽しめない。それならリアル旅はコロナから社会が復活したら心の底から楽しむことにして、この時間を持て余しがちの外に出られない期間は、旅にまつわる本を読んで、疑似旅行した気になろうと思いまして、所有する旅本や、近所の図書館が閉館する前に借りた旅本を読んで過ごしております。
↓は自粛要請一歩手前くらいのときに近所の図書館で借りてきた3冊。何気なく手に取ったのですが、これは3冊とも大当たりだったので紹介したいと思います。
深夜航路: 午前0時からはじまる船旅 – 2018/6/18 清水 浩史
この3冊の中で唯一著者名を存じ上げなかった本。深夜フェリーを使う旅が好きだったのと、「深夜特急」に通ずるイメージで思わず手に取りました。本書は日本国内の0時を過ぎてから出航する深夜フェリーに限定した乗船記&下船後の小旅行の記録です。相当ディープな旅。まっとうな人はあまり好まないかもしれませんが、私はこのような旅は大好きです。
本文中の旅は著者の清水氏の野郎一人旅。まず、前提が深夜出航のフェリーという訳アリの方が多そうな交通手段。時間帯からもその交通手段からも明るい道を歩く旅ではないのですが、その深夜の船旅には、後ろめたいような隔世の感に妙に惹かれるものがあります。多分この手の旅が好きな人にはたまらない感覚だと思います。
私も学生の頃は深夜フェリーで北海道と本州を行き来していました。通常なら徒歩で行かないような街外れにある港に深夜に歩いて向かって、ほっと乗船して、また街はずれの港に早朝や深夜に着岸するフェリーから徒歩で降りる旅の手触りは、飛行機や新幹線では味わえない寂寥感に満ちた旅情がありました。
現在、仕事を抱えつつ家族中心の生活を送りそのような一人気ままな旅ができない我が身をあらためて実感しますし、そのような旅ができた若い独身時代を懐かしみつつ、一気に本書を読んでしまいました。
↓本書冒頭の「はじめに」の文章。
読ませてくれます。作者の清水さんの感情を抑えつつも、深夜フェリーの旅を掘り下げた文章にも惹かれます。深夜フェリーは愛好者が多い交通手段とは思えないのですが、この本に共感できる自分は幸せだなと思います。
深夜フェリー下船後の旅も、廃村に行ったり、フェリーよりさらに小さな渡船に乗りに行ったり、マニアックだけど船や歴史や地理が好きな人には堪らない旅をさらっと入れ込んで紹介されているのも良かったです。時折入る他の本の引用もさりげなくかつ効果的で「読んでみたい、、、」と思ってしまうやられた感があります。今回は図書館本でしたが、同著者の掘り下げたまたディープな無人島本もあるようなので、こちらも気になっています。
野武士、西へ 二年間の散歩 -2016/3/18 久住 昌之
マンガ家の久住昌之氏が東京から大阪へ歩いていく”散歩”の記録。継ぎ足し継ぎ足し、2年間かけて”散歩”というスタイルで東京から大阪まで歩く道中記。
この本も基本的にはおっさんの一人旅ですが、上の清水さんの旅よりはだいぶ明るい旅(^^) 表紙はマンガの絵で作者もマンガですが、絵は挿絵程度で基本的には文書による旅本です。
食事は適当な店に入って当たったり、外したり、うんこをしたくなったけどトイレがなかったり、道に迷ったり、、、。そんな話が東京から大阪まで続きます。
高校生のころにトレンチコートを着たダンディーな男が駅弁と格闘する『夜行』で衝撃を受けて以来、”泉昌之”(久住昌之氏と泉晴紀の漫画家コンビ)好きですが、この散歩の中でも久住氏が自分の中を吐露するような形で、過去の作品などに触れているのがうれしい。
↓「野武士、西へ 二年間の散歩」の中の『夜行』を回想するシーン。
最近の泉昌之作品で好きな『食の軍師』の「シウマイ弁当」のくだりも出てきて、このタイミングで作っていたのですか、と新鮮な発見があったり。
泉昌之の『夜行』収録本↓
宮脇俊三と旅した鉄道風景 (日本語) 単行本 – 2013/3/9 櫻井 寛
鉄道紀行作家の宮脇俊三氏の晩年は、それまでの一人旅スタイルとは別に、団体で欧州を回る旅行をされていました。その旅行に同行されたカメラマンの櫻井寛氏の本です。
宮脇作品ファンとしては、宮脇先生が旅され、著された文章を拝読し、自分なりに想像していたところが、本作品では写真で紹介されていて、答え合わせのような感覚になります。
本書の欧州を鉄道で回っている様子の写真を見ると、このコロナが流行している現在、この本に出てくるような旅行ができるのいつになるのか、、、とすら思ってしまうのもまた事実。本書のような旅をされた著者の宮脇さん・櫻井さんが心底うらやましくなります。
まだまだ旅に出られない時間はあるので、旅本で疑似旅を味わう時間が続きそうです。
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