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国立科学博物館のアザラシ展示が熱い!クラカケアザラシからアザラシイモまで網羅した展示とミュージアムショップのお土産が素敵です

東京の上野公園にある国立科学博物館・通称”科博(かはく)”。日本でもっとも入場者数が多い博物館施設です。

上野公園にある国立科学博物館

この科博は海獣目線、アザラシファン的にも非常に面白い博物館でもあります。

なので、私は海獣が好きな方・特にアザラシが好きな方に、力を込めてお伝えしたいのです。「上野に行ったら、動物園だけではなく科博に行くべし。」と。

科博から歩いて五分くらいの所に上野動物園があり、ゼニガタアザラシの生体展示があります。上野動物園をディスるわけではないのですが、生体のゼニガタアザラシは上野動物園以外でも飼育している施設はたくさんありますし、何なら北海道の襟裳岬には野生のゼニガタアザラシの実物・本物が岩の上に転がっていて見ることができるわけですからね。しかし科博のアザラシ関連展示物はここでしか見られない展示、他で見られるとしても場所は非常に限られるであろう展示が多いのです。

博物館における生物分野の魅力というのは、水族館や動物園などの生体展示では近づけない細部まで接近して見ることが出来たり、時間軸を遡る視点があったり、広範な分類群をクロスしてみたり、あるいは人間と生物の関わりや文化面視点の展示があったり、、、等々、他分野との知識の交流だと思います。国立科学博物館も膨大な展示があり、鰭脚類目線でも多様な側面から楽しむことができます。

今回はコアなアザラシファン、海獣ファンも唸る科博のアザラシ・鰭脚類展示を紹介していきたいと思います。

※今回紹介している内容や写真は、2023年9月中旬頃に科博を訪問した時の情報を基にしております。

1.現生種のアザラシ・鰭脚類の展示

まずは分かりやすい現世種(現在の地球上に生息している種)のアザラシや鰭脚類の科博のはく製(剥製)の紹介です。

1-1.ゼニガタアザラシのはく製

場所:地球館1F 地球の多様な生き物たち / 1.海洋生物の多様性 / 6.光合成生態系コーナーの天井の近く

科博で展示されているアザラシ展示の中でもっとも日本人に馴染み深い種と思われるのがゼニガタアザラシ。ゼニガタアザラシは日本の北海道にも定住している種です。そして上述のとおり、科博から歩いて5分くらいのところにある上野動物園では生体が飼育展示されています。

展示の仕方がユニーク。天井から剥製が吊り下げられて、宙に浮いて空を飛んでいるように見えます。海底から見上げているイメージかな。

少し引いて撮影。ラッコのはく製やシャチの模型、マグロの仲間などと一緒に吊るされています。

展示場所付近にはタブレット?PC?が設置されており、解説を見て、知識を深めることができます。

解説文。日本語の他、英語、中国語、韓国語の表示があるようです。↑は6歳の娘と一緒に見たこども向けバージョン。漢字に読み仮名がついています。読み仮名はあるけど相当高度な内容。

なお、2012年に科博を訪問した時とゼニガタアザラシの展示形態が変わっていました。かつての様子はこちら(2012年9月訪問の記録)で紹介しています。

1-2.クラカケアザラシのはく製

場所:日本館3F南翼 日本列島の素顔 / 1.南北に長い日本列島の自然 / 5.亜寒帯

続いて日本近海に生息するクラカケアザラシ。コーナー名の通り日本の亜寒帯の生物、つまり北海道に生息する生物のひとつとして、ヒグマやナキウサギなどと一緒に展示されています。

クラカケアザラシは北海道の流氷周辺、日本の領海内でも観察できる種です。とはいえ、2023年10月現在、日本国内で生体を飼育している動物園・水族館はありませんので、なかなかレアな種ではあります。なのではく製とはいえ本種の独特のクラカケ(鞍掛)模様を間近で見られるのは貴重です。

若干、眼が怖い剥製。古いはく製かな?

1-3.ウェッデルアザラシのはく製

場所:地球館1F 地球の多様な生き物たち / 1.海洋生物の多様性 / 6.光合成生態系コーナー。ゼニガタアザラシの下辺り。

科博には南極海に分布するウェッデルアザラシの幼獣のはく製の展示があります。ウェッデルアザラシも2023年現在、日本国内で生体の飼育展示は無いので貴重です。最初に紹介した吊るされたゼニガタアザラシのはく製の下あたりにいます。

幼獣だけども、顔が若干おっさん臭いように見えるけども。

ウェッデルアザラシの解説です。体長3m、体重450kgはかなり大柄。先述の日本近海に住むゼニガタアザラシやクラカケアザラシ、ゴマフアザラシなどより相当でかい。

1-4.セイウチのはく製

場所:地球館3F 歩いてみよう!コンパス

はく製の紹介の最後はセイウチです。展示場所が若干特殊で、3階の子供向けコーナーの「歩いてみよう!コンパス」というコーナー。

かなり近くでセイウチを見られる迫力溢れるコーナー。。。なのですが、このコーナーは2023年10月23日(月・休館日)から閉室になって、閉室後は展示室内の工事・点検を行い、「親と子のたんけんひろば コンパス」として11月中旬に運営再開を予定しているとのこと。

親と子のたんけんひろば「コンパス」-国立科学博物館-
親と子のたんけんひろば「コンパス」

再開後もセイウチが展示されるかはわかりません。再開したらまた様子を見に行こうと思います。

ここまで紹介したものはクラカケアザラシやウェッデルアザラシなど、日本の動物園・水族館では飼育されていない珍しい種のはく製もあるので、見ごたえは十分でもありますが、現生種のはく製ばかり。王道ではありますが、意外性に欠けるとも言えます。

しかし科博の本気はここからです。

2.アシカとアザラシの共通の祖先・アロデスムス

場所:日本館3F北翼 日本列島の生い立ち / 3.日本海の誕生と日本列島の成立 / 17.日本海の誕生とビカリアの海

まずは現生のアザラシと”時間軸”を絡めた展示。アシカとアザラシの祖先と共通しながらも大昔に絶滅した種・アロデスムスの骨格展示があります。骨格展示の濃い茶色の所は化石が無くて補った部分と思いますが、補った部分のほうが多いようにも見える。本当によくここまで再現できるなー、と感心します。

一個一個の歯が大きい!顔から胴体、前足に掛けての流れはアシカっぽく、後脚の具合などはアザラシっぽい?ような印象を受けました。

後脚の具合。短い尻尾の骨もありますね。

アロデスムスの解説。

博物館の解説によると誕生したばかりの日本海に最初にすみついた海生哺乳類。アシカのようでもあるけども、”アザラシと共通の祖先をもつ絶滅した系統群”という書き方からして、現生のアザラシやアシカどもの直系の祖先ではない。強いて言えばやっぱり上半身はアシカ、下半身はアザラシに似ている?

(寄り道)海に戻った哺乳類の祖先たち

地球館B2F 地球環境の変動と生物の進化 -誕生と絶滅の不思議- / 7.水に戻った四肢動物 /

アザラシなどの現生の海獣類とは直接は繋がらないのですが、陸から海生に戻る過程の哺乳類の祖先の化石の展示も。このように、長い時間軸と広いカテゴリでの知識のクロスができるのが博物館の魅力。

この辺りのコーナーの一番のメジャーどころはステラーダイカイギュウでしょうか。私もそれ以外の化石の名前は知らないものばかり。あと同じコーナーに展示されている昔のウミガメはちょっと感動する大きさです。あえて写真は載せませんので、科博の同コーナーを見上げてカメの大きさにおののかれてください。

3.アザラシ好きは必見!アザラシに寄生する”アザラシジラミ”

地球館1F 地球の多様な生き物たち / 4.系統広場 / 21.系統広場

科博の生物系の展示は多分あらゆる分野が対象だと思われます。なので、アザラシに寄生する”アザラシジラミ”の展示もあります。これは私は他の動物園・水族館ではアザラシジラミの展示は見たことがなく、おそらく国内では科博以外の場所では見られない展示ではないかと。ゆえにコアなアザラシ好きな方は必見の展示です。

↑写真の上に写っている大きな写真は001のコロモジラミ。名前からしてヒトに寄生するシラミかな。で、カイジュウジラミ科のアザラシジラミは↑の丸数字003の上の四角い中に展示があるのです。この撮影がまた非常に難しい。。。

光っている四角い部分をクロースアップ。中にとっくりのような形の虫のような何か写っているのがお分かりいただけるでしょうか。これがアザラシジラミの展示。

この時の手持ちの機材ではこれが精一杯でした。展示スペース全体は照明控えめで、アザラシジラミの展示は後ろから光が当てられていて、光量調整が難しいのと、何よりシラミの展示なのでめちゃくちゃ小さい撮影者泣かせの条件。。。リベンジしなきゃかな。
ちなみにアザラシジラミの展示は実物ではなく、写真展示な気もしましたが、どうだろう。

なお、アザラシジラミが展示されていたのは以下のいろいろな生物の標本が展示されているコーナーの一角。

アザラシジラミの展示場所の見つけ方が非常に難しいので、たどり着き方を示しておきます。まずは↑展示コーナーに入ったら、目立つ「長い足のでかいカニ」を探す(中央やや右の上部に写っているやつ。タカアシガニです)。このでかいカニの左手に「クワガタやカブトムシ」の類のコーナーがあり、でかいカニとカブトムシの間のやや下方にアザラシジラミがいます。図示すると以下の赤丸の場所。

昆虫など生物が苦手な方が探すのはきつい。。。か?

シラミの展示などからもわかるように、アザラシ含め野生動物は寄生している生物の宝庫。野生動物は素手で触れるようなきれいな物体ではありません。鰭脚類の寄生虫についてもっと知りたい方は以下の文献がおすすめ。ちょっと古いですが、素人が抱き抱えたり、触ったりするべき代物ではないことがわかります。

日本産鰭足類の寄生虫類リストと文献目録(https://fsf.fra.affrc.go.jp/bulletin/kenpoupdf/kenpou36-27.pdf)

4.”アザラシイモ”の展示。芋の仲間ではないよ。

地球館1F 地球の多様な生き物たち / 3.多様性の由来 / 20.多様性の実例

アザラシジラミの展示も衝撃でしたが、科博のアザラシ関係の展示で私が最大の衝撃を受けたのが”アザラシイモ”。この展示で、まだ知らなかったディープな生き物の世界があることを実感するのでした。

アザラシイモと書いてしまうと、食べる芋の仲間、つまり植物の仲間でアザラシのようにずんぐりむっくりした芋?と思われる方いるかもしれません。

が、違うのです。アザラシイモは”貝”の仲間なのです。イモでカイと書くと、沖縄に詳しい方、ダイビングをする方は、「イモガイ、、、猛毒のアンボイナの仲間?」と思われる方もいるかもしれません。その通りで、アザラシイモはイモガイ・貝の仲間。アザラシイモはこんな姿をしています。

姿を見ても「お、おう。。。。」といった感じ。なぜこれにアザラシの名を冠したのか、、、と疑問に思ってしまう。↓129番にアザラシイモの表示があります。

、、、この表を見て興味を引くのは、”129”という数字の大きさ=そんなに多くの種がいる?ということ、他にもキリンイモとか妙な名前があることとか。131が沖縄の海にもいて猛毒をもつことで有名なアンボイナも気になるぞ。

科博の展示ではディープなイモガイの展示を眺めることができます。アザラシを追っかけていたはずが、いつの間にかイモガイの世界に引き込まれるのです。

(寄り道)ディープなイモガイの世界に浸る

少し寄り道して、種の多様性に富み、ディープなイモガイの世界へ。

これ、みんな種が違うイモガイの仲間。最初にアザラシイモをクローズアップしてしまいましたが、引いて撮るとこんな具合。

、、、狂気の沙汰です。展示種数は確か200を超えていたように思います。並べてみると「これ個体差レベルの違いじゃね?」とか言いたくなるのですが、おそらく生息地や食性が違うとか、細かいところの形態が違うとか、分類の必然性があるのでしょう。いくつか気になる名前のイモガイがいたので紹介しましょう。

気になったイモガイ①:ゴマフイモ

展示されているイモガイの種名リストを見ていて気になった一つ目。ゴマフイモ。アザラシ界にも”ゴマフアザラシ”という大きな存在がありますから。

ゴマフイモ(40番)はこんな具合です。

おお、ちょっとゴマフ(胡麻斑)模様っぽい気がする、”アザラシイモ”よりはこの名前を付けた気持ちが分かるぞ。

気になったイモガイ②:カワウソイモ

次はアザラシとの”海獣”つながりでカワウソイモです。

カワウソイモ(85番)はこんな具合。

なんで、カワウソイモ??

気になったイモガイ③:イタチイモ

カワウソイモの2番前の83番にイタチイモがいます。こんな具合のやつ。

なんでイタチイモという名前になったのか???

気になったイモガイ④:アオダイショウイモ

アオダイショウイモというのもいました。ヘビのアオダイショウっぽいのでしょうか。

アオダイショウイモ(51番)はこんな具合。

なんでアオダイショウイモ??????

気になったイモガイ⑤:ヤキイモ

次はヤキイモです。75番。焼き芋っぽいのでしょうかね。

ヤキイモ(75番)はこんな具合。

なんで、ヤキイモ??????

と、こんな具合に、他にもミルクイモとかハイエナイモとか、「なぜこの名前?」と思いつづける展示が続きます。これを見分けるの無理ゲー過ぎ、、、とか思いつつ、きっとこの展示を作った人は「アオダイショウイモ見つけた!」とか喜んでいる人で、この博物館の中にその手の類の人がうごめいているんだろうなぁ、と想像します。どこの世界にもこういう人達がいて学問は発達していくのです、、、多分。

アザラシ・海獣好きな人におすすめの国立科学博物館のグッズ

ディープなイモガイの世界を後にして、最後に紹介するのは科博のオリジナル海獣グッズ。科博にはミュージアムショップが併設されており、館内の展示物にちなんだいろいろな品が売られています。

科博オリジナルで鰭脚類・アザラシ好き観点による圧倒的一押しの品は「日本の鰭脚類」ポスター。

日本近海に暮らすアザラシ5種(ゴマフ・ゼニガタ・ワモン・クラカケ・アゴヒゲ)とアシカ科2種(トド(オス・メス)・キタオットセイ(オス・メス))が描かれています。サイズはA1版。

私が2023年9月に購入したものは、2021年8月30日の初版。あまり売れてない、、のかな?「監修 国立科学博物館」の文字が入っています。

編集は国立科学博物館動物研究部脊椎動物研究グループ研究主幹:田島木綿子さん、絵は田中豊美さん。田中さんは隠れた名著「海獣図鑑」の絵を描かれた方です。

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そして、、科博グッズで海獣的にもう一つ気になるポスターがありました。それは「世界の鯨」ポスター。

こちらは1990年8月1日に初版と、だいぶ昔に発行されていて、私が買ったのは2021年10月1日発行の第6版。そして鯨のポスターは「日本の鰭脚類」より少し大きいB1版サイズです。

2枚のポスターは我が家の寝室の壁に並べて貼ることにしました。狭い我が家の寝室の壁面はポスター2枚でいっぱいに。

おやすみからおはようまで、アザラシ・海獣たちに見守られ、見守る生活になりました。

次弾としては、地球上のアザラシ・アシカ類を網羅した「世界の鰭脚類」のポスターをぜひ作成してほしいものです。さらには鯨類と鰭脚類にラッコやマナティなどを入れて、「世界の海獣類・統一ポスター」が出来たら、さらに素晴らしい。(あとポスターのサイズは統一いただけると嬉しい!)
「日本の鰭脚類」ポスターがバカ売れしたら、新たな動きにつながると思うので、科博に行ったらいっぱい買いこみましょう。

なお、この「日本の鰭脚類」と「世界の鯨」ポスターは、上野の科博のミュージアムショップまで行かなくても以下のオンライン通販サイトで購入することができますので、遠隔地から大量購入して、家の中に貼ったり、その辺の掲示板に貼りまくることもできます。サイズが大きいので、持ち帰りの手間など考えると、むしろ通販で買うのがおすすめかも。

国立科学博物館 ミュージアムショップ / ポスター

アザラシが好き方はぜひ上野の科博へ!

今回紹介したとおり、科博は動物園や水族館の生体展示とは異なる角度でアザラシを見ることができる大変おススメの施設です。

アザラシ好きな方、海獣好き、動物好きな方は、上野に行ったら動物園に行ってゼニガタアザラシを眺める方が多いと思いますが、ぜひ動物園とセットで科博にも。むしろ科博だけでもいいかもしれません。(そういえば最近の私は上野に行ったら科博だけで動物園に行かないことが多いぞ、、、。)

科博は非常に広いのでまともに展示を見ていたら一日かけても堪能しきれないくらい、、というかすべてを見る前に見ている側が疲れてしまうくらいの圧倒的ボリュームな施設ではありますが、今回紹介した鰭脚類展示にポイントを絞れば、2時間くらい、急げば1時間で見ることもできるはず。

なお、今回は紹介しきれませんでしたが、”海獣”といえばアザラシや鰭脚類の他にも、イルカを含む鯨類やラッコ、カワウソ、マナティなどがいるわけでし、海獣以外にも海に暮らす魚や鳥、ヒトの展示なども山のようにあるので、科博の中にはまだまだディープな海が広がっています!
数回行かないと全貌が見えてこない懐の深さも科博の魅力ですよね。ぜひ浸ってくださいませ。

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