以前から『内地の人の「北海道は広い」というイメージをぶち壊し、北海道は狭いので札幌近辺以外の北海道の地方に行こう」キャンペーン』に勤しんでおります。
※北海道をディスるつもりはなく北海道の広さ・広大さを称える「北海道すげー!」という記事やSNS投稿が溢れている昨今、むしろ北海道はそんなに大きくないアピールをして、「そんなら札幌のついでに網走とか釧路とか稚内とか行ってみようか?」という北海道の札幌近郊以外の地方にも行ってみよう!と思う人を増やす戦略が正しいのではないかと思うのです。
(私は北海道に7年ほど住んでいましたし、今でも年に数回は北海道の地方に行っております。札幌近郊だけで北海道を終わらすのは惜しいという想いがあります。)
今回はそのような「北海道は小さいぞシリーズ」の第三弾で、東京と札幌からの等距離の同心円を描いて、等距離圏内にどのような都市があるか、冷静に観察して北海道の狭さを観察しようと思います。
(シリーズの第一弾は東京発1泊2日でおたる水族館と紋別を堪能するツアーの提案、第二弾は地図を使って実物以上の広さを刷り込もうとしてくる北海道の実サイズを暴露する話でした。下の方にリンクを貼り付けておきます。)
さて、北海道の広さを称えるネタの定番として、「北海道最南端の白神岬から知床岬まで530kmあって、これは本州の東京~岡山と同じ距離!」といった北海道のある2地点間距離と本州の2地点距離を比較して、北海道は広いと結論に導くネタがよくありますが、これは公平ではないと思うのです。
なぜなら北海道で暮らしたり、旅をしたりしている際に、白神岬から知床岬までの距離を意識することはまず無いですし、本州でも同様に「山口県下関市から青森県下北半島大間崎の距離は1200kmだから本州は広い」とか言われてもぴんと来ないですよね。これは下関⇔下北半島を移動したり意識したりすることが通常はまず無いことが要因です。
なので、距離比較ネタをやるなら、本州の中心である「東京」と北海道の中心である「札幌」から、等距離にどのような都市や県があるかを比較するのが、実用的で公平だと思うのです。
東京と札幌の中心部から50kmごとに等距離の同心円を描いてみる
さっそく、札幌と東京から50kmから400kmまで、50kmごとに同心円を地理院の電子国土web上で描いてみました。以下のような具合です。
ぱっと見で北海道のほうが円が大きく見えるのは、メルカトル図法で描かれているから。(日本地図が北に行くほど実際の縮尺より拡大されるメルカトル図法マジックは、北海道は小さいシリーズ第2弾の記事で解説しています。)
絵が南北に分かれていると比較しにくいので、東京中心の地図と札幌中心の地図を並べました。
それでは東京と札幌から50kmごとにどのような都市や県があるか冷静に見ていきましょう。
東京・札幌から50km圏の比較
まずは50kmです。東京から横浜、さいたま、千葉などが30km前後に過ぎず、50km前後は八王子やつくばや横須賀、茅ヶ崎、成田などになります。だいたい電車で1時間圏内といったところでしょうか。
札幌からは、小樽や岩見沢、新千歳空港がある千歳市辺りは完全に50km圏内で、50km前後にあるのが夕張、苫小牧、余市、美唄辺りです。そこそこ札幌から離れている印象がある都市まで含まれているように感じます。
東京から50km:八王子、横須賀、茅ヶ崎、成田
札幌から50km:苫小牧、夕張、余市、美唄
東京・札幌から100km圏の比較
東京から100kmとなると水戸、宇都宮、前橋といった北関東諸県の県庁所在地がちょうどこの距離。山梨の甲府市もだいたい100kmです。西の沼津や伊東、南は伊豆諸島の大島、東は千葉の銚子などもこの100km辺り。関東近郊で高速道路を使えば1時間ちょい、新幹線がある都市は1時間もかからずに行ける辺りですね。
札幌から100kmは南は室蘭、北は留萌、道内第2の都市の旭川はわずかに100kmに入らず(札幌ー旭川は110kmほどです)、東は富良野も含まれます。南方面ですが札幌から見て道南の入り口のイメージがある長万部がちょうど100kmで、道央圏はほぼすべてが入ってしまいました。積丹半島もすっぽりですね。
東京から100km:水戸、宇都宮、前橋、高崎、甲府、沼津、伊東、銚子、伊豆大島
札幌から100km:室蘭、留萌、富良野、長万部
東京・札幌から150km圏の比較
東京から150kmとなると、西側は山梨県を包み込み、静岡市や伊豆半島先端の石廊崎辺りまで含みます。北側は大きな都市はないですが、おおよそ茨城、栃木、群馬の福島県・新潟県境くらいまで、つまり関東地方の外縁部辺りです。新幹線を使えば一時間かかるくらいの場所。
札幌から150km圏内は、道北の旭川はもちろん含まれ、士別や羽幌も入ります。道東では帯広に達していますし、道南では函館まで達しています。まぁ札幌-函館の実際の移動は噴火湾や羊蹄山や支笏湖の辺りの山岳等があるので直線距離よりかなり迂回するのですが、、、。しかし、旭川、帯広、函館まで含まれるので、何となく北海道の主要部分は入ってしまった感がああります。
東京から150km:栃木茨城群馬と福島新潟県境付近、静岡、伊豆半島先端
札幌から150km:旭川、函館、帯広、士別、羽幌
東京・札幌から200km圏の比較
東京から200kmはいわき、郡山、長岡、長野、浜松、御蔵島辺りになります。関東を脱出して、福島県、新潟県、長野県、静岡県にだいぶ食い込んできました。新幹線で1時間半、高速道路で2~3時間くらいの距離でしょうか。
札幌から200kmとなると渡島半島はほぼ包み込み北海道最南端の松前近くまでと襟裳岬辺り。東は北見の手前くらいと十勝川河口の辺りも含むので、釧路地方と十勝地方の境くらいまで。北は名寄を越えて、利尻島の南手間くらいまで。めぼしい都市が少ないのでイメージしにくいか。。。
東京から200km:いわき、郡山、長岡、長野、浜松
札幌から200km:松前、名寄、襟裳岬、遠軽、天塩川河口
東京・札幌から250km圏の比較
東京から250km。だいぶ広がってきました。北は福島市・新潟市辺り。仙台はまだ含まれていません。西はようやく富山、そして愛知県の東部まで到達です。
札幌から250kmは釧路、紋別は飲み込まれ、網走・稚内付近まで到達。道北・道東の主要都市辺りは含まれる。南側は、、、北海道が小さすぎるので、下北半島・津軽半島を越えて青森市付近に達してしまいました。
東京から250km:福島、新潟、富山、豊橋
札幌から250km:釧路、網走、稚内、紋別、(本州)青森
東京・札幌から300km圏の比較
東京から300km。北は仙台市、山形市に到達。西は金沢市、東海道方面は名古屋市を越え、米原、津辺り。あと八丈島がここにいます。八丈島は案外遠いのね。。。
札幌から300kmは、北は完全に宗谷岬を越えています。むしろサハリンが近いぞ。利尻島礼文島も含まれ、道内で残っているのは知床半島と根室辺りくらい。南側は、八戸・弘前辺りまで到達ですが、さきほどの250kmが青森市だったのに、300kmでは青森県内から出ていない。かように本州は広大なのです。
東京から300km:仙台、山形、金沢、名古屋、津、八丈島
札幌から300km:宗谷岬、中標津、厚岸、(本州)八戸、弘前
東京・札幌から350km圏の比較
東京から350km。北は酒田、大崎市辺り?全国的にはマイナーですが、要するに宮城県と岩手県、山形県と秋田県の県境を突破できていません。西は琵琶湖の南端辺りか。京都には達していません。京は遠い。。。南は青ヶ島。
札幌から350kmは、知床岬先端、根室に到達。納沙布岬はぎりで圏外のようです。一方でサハリンや国後島も入ってきました。南は秋田県北の能代、岩手県北の八幡平辺り?(秋田市や盛岡市には達していません。)
東京から350km:酒田(山形県)、大崎(宮城県)、大津、青ヶ島
札幌から350km:根室、知床岬、サハリン、国後島の南端、能代(秋田県)、八幡平(岩手県)
東京・札幌から400km圏の比較
最後の400km比較。東京から400km。北は岩手県平泉辺り。岩手県秋田県には入ったけど、秋田市盛岡市には到達できていません。西は京都は入り、ほぼ大阪に到達です。
札幌から400kmは、、、北海道本土は全部。国後島の大部分とサハリン。南は秋田市や盛岡市に達しました。また北西方向は残り20㎞ほどでロシア本土の沿海地方です!
東京から400km:平泉(岩手県)、京都、大阪
札幌から400km:北海道全土、国後島大半、サハリン、ロシア本土・沿海地方
東京と札幌からの等距離都市のまとめ
東京・札幌からの等距離の都市や地点をまとめると以下になります。
東京 | 札幌 | |
50km | 八王子、横須賀、茅ヶ崎、成田 | 新千歳空港、小樽、苫小牧、夕張、余市、 |
100km | 水戸、宇都宮、前橋、高崎、甲府、沼津、伊東、銚子、伊豆大島 | 旭川、室蘭、留萌、富良野、長万部 |
150km | 栃木茨城群馬と福島新潟県境付近、静岡、伊豆半島先端 | 函館、帯広、士別、羽幌 |
200km | いわき、郡山、長野、浜松 | 松前、名寄、襟裳岬 |
250km | 福島、新潟、富山、豊橋 | 釧路、網走、稚内、紋別、青森 |
300km | 仙台、山形、金沢、名古屋、米原、津、八丈島 | 宗谷岬、中標津、厚岸、八戸、弘前 |
350km | 酒田(山形県)、大崎(宮城県)、大津、青ヶ島 | 根室、知床岬、サハリン南端、国後島南端、能代(秋田県)、八幡平(岩手県) |
400km | 平泉(岩手県)、京都、大阪 | 北海道全土、国後島大半、サハリン、ロシア本土・沿海地方 |
道内の地方の拠点都市である、旭川・帯広・函館はわずか150km圏内で、これは東京~関東地方周縁と同じ距離であります。案外近いですよね?
そして東京~新潟・名古屋くらいと等距離なのが、札幌~釧路・稚内・網走・青森。
東京~大阪くらいの距離があれば北海道はすっぽり入るどころか、サハリンやロシア本土近辺まで到達する。。。
北海道の小島ぶりが実感できると思います。
~おまけ~ 北海道でも意外なほど広大な場所があった
今回の検証で北海道小さい、と感じたのですが、逆に案外広い、、、というか長いのね、と思ったのがこいつら↓
北方領土たちです。特に国後島と択捉島。択捉島の面積は香川東京神奈川大阪などの面積の大きくない都府県より大広く、埼玉県並みの大きさ。そして国後島南端~択捉島北端まで340kmもあるので、これは札幌~知床岬と同距離。なかなかの広大ぶりが実感できると思います。
↑の図でも国後島だけでも知床半島の二倍くらいありそうだし、相当広大な島々ですね。
北方領土は北海道以上にアザラシを含む野生動物の宝庫のようですから、いつか行ってみたいなー、と思うものの、昨今のロシア情勢を鑑みると、当面は無理でしょうね。。。生きているうちに一度は行ってみたいものです。
以下、過去の北海道は小さいシリーズです。
コメント