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【春・新潟の山菜】ゼンマイ採りと伝統的な処理・乾燥方法、その過程で使用する道具について

新潟の山間地にある私の祖父母の家。田畑を耕し、山菜やキノコを採って暮らしていて、山菜関係はこれまでもこのサイトで紹介したことがありました。(2012年の山菜取りの様子2013年は送ってもらった山菜だったり
こんな感じで帰省時に山菜料理を食べたり、自分も春先に山菜を採って自分の食べるくらいは採っていました。

しかし、↑の記録を書いた頃にはまだ存命だった祖父母、山菜を教えてくれた親戚のおばちゃんはすでにこの世を去り、私の両親も年をとって山に行くのはしんどそうな感じになってきました。この集落もふと見渡すと高齢化、過疎化の波はすさまじく、山に行って山菜を採る人がほぼいなくなってしまいました。

2026年は5月の連休に帰省したのですが、我が家のある集落でゼンマイを干している家がゼロ。寂しくもあります。

かつては、春になると、各家が競うように山に向かって、ゼンマイを収穫して、家の前に筵(ムシロ)を何枚も広げて干していたのが幻のようです。

誰もゼンマイを取らないので、ゼンマイだらけの山に行って、収穫と収穫後の処理に忙しい日々を過ごしました。

我が家のゼンマイの処理は、集落の中でも特に伝統的というか、昔ながらのスタイルであり、水道水やガスを使わないで処理します。つまり、大きな鉄鍋に家の湧き水(水質検査済みで飲用可の軟水)を満たして、杉の葉をガンガン燃やして、ゼンマイを煮て、ワラで出来た筵に広げて干し、手もみをして仕上げています。道具も先祖伝来の道具。江戸時代位のやり方とあまり変わりはないように思います。

我が集落でもゼンマイを採る人が最盛期の1/100くらい(おそらく私の他、数人いるかどうか?)なので、この消え去り行く風習の記録も兼ね、山の中のゼンマイ・山菜の様子から取ってきた後の処理の様子も紹介したいと思います。

ゼンマイを収穫!山の中で出会うゼンマイや山菜たち

夜明け頃、このゼンマイ採りの季節だと、だいたい午前5時前後に起床、山用の服に着替え、取った山菜を入れる袋や背負うザック、クマ鈴など身支度を整えます。最近はクマのニュースも増えてきたのでクマ鈴を持参。確かにここ数年で、我が集落でもちらほらクマの情報を聞くようにもなりました。

用意が出来たら、家の前の湧き水を一杯飲んで(コップは新潟・菊水酒造の「ふなぐち一番しぼり」の空き缶)出発します。この家の前の湧き水は以前紹介した水質検査をして飲用可だった軟水

家の前の湧き水を一杯飲んでから出発

家を出て山菜採り会場の山へ。
※私が山菜を採る山は我が家(母や叔父)や親せき・縁者が持っている土地。無断で他人の土地で山菜を採るとトラブルになりますが、その心配はない場所です。

朝日が差し込む山の様子。もうゼンマイがたくさん写っています

今年は季節の巡りが早く、山菜たちもいつもの年より1週間~2週間くらい早い。我が家の山の場合、例年だと5月の連休の頃に、ゼンマイ採りのピークは来るのですが、今年はゼンマイも伸びすぎなものや既に葉が開いているものもかなり多かったです。手遅れではないですが後半戦の様子。野球で言えば7回の裏くらいな感じ。しかしここまで伸びたゼンマイが放置されていることからもゼンマイ採り人口が減って、採られなくなっていることが窺えます。

山菜のゼンマイ。だいぶ大きく育っていますが、まだ新芽が被る綿を纏っていて素敵な感じ

それでもまだまだ良いゼンマイがありました。

スギ林の林床に生えるゼンマイたち

こういうのを見つけると小躍りしたくなります。写真を撮影した後に収穫。

ゼンマイが生えている林床。この写真サイズではゼンマイがどこにあるかはわかりにくいのですが、こういう所から瞬時に良さそうなゼンマイやその他有用な山菜を見つける眼力・能力が重要で、幼いころから鍛錬されて今に至ります。この辺りの自然の風景から望む物を見つける能力は、野生アザラシ探索時のアザラシ発見能力にも寄与していると思います。

せっかくなのでゼンマイ以外の今回見つけた山菜も紹介します。

山菜の人気者のタラの芽。タラノキの若芽で、とても有名な山菜ですが、我が家の集落ではもともと食べる習慣は無かったようです。情報社会の発展により「タラの芽は食べられる、しかも美味しいらしい」という情報が来て、食べるようになりました。私の感覚では1990年代くらいから集落でも採るようになったように思います。

なお、我が家の山はなぜかここ数年、タラの木が増えまくっており、小さなタラの木、タラの芽があちこちに。。。タラの木は幹には棘があって歩くときにクソ邪魔になるので、ちょっと減らしたい。なので、圧強めに収穫します。

次はこちら。

ちょっと開きすぎですが、コシアブラ。これも地方によって人気がある山菜ですが、コシアブラも我が家の集落では食べる習慣は無かったようです。タラの芽に続いて、「食用可」の情報が入ってきて、最近では食べる習慣が定着しつつあるようです。私の感覚では2000年~2010年くらいに情報が入って普及してきたようにと思います。

幹に棘があるけどタラの芽でもないし、葉っぱはコシアブラっぽいけど、コシアブラは棘は無いし、何だろうと思っていたのですが、おそらくハリギリ。。。これも地方によっては人気がある山菜のようですが、やはり私の集落では食べる習慣は無く、情報も2010年代後半~2020年代になり、入ってきたような感じです。写真の状態は開きすぎでもっと伸びる間の若い芽を食べるようです。

次はこちら。

これはシオデ。「山のアスパラガス」「山菜の女王」「幻の山菜」と呼ばれたりする人気の山菜ですが、あまり流通には乗らないので珍しいようです。我が家の山では「数は多くないけど、まぁ生えているよね」というポジションの山菜です。ゼンマイ採り時に出会うと、シオデをゼンマイと分けて持ち帰るのも面倒なので、私は気が向いたらその場で食べます。みずみずしくて甘みがあります。山菜というのはだいたい生ではえぐい食味をしているので、アクをとったり油で揚げたりして食べるのですが、シオデは生でも食べられる山菜で、さすが山菜の女王と呼ばれるだけあります。

山から採ってきたら、綿採りや茎取り、ごみ取り処理!

さて、3時間くらい山をうろついだら、収穫したゼンマイをを背負ったまま、ゼンマイを探して、屈んで収獲するというのがきつくなってくる限界に達したので、一度家に引き上げます。

こちらが持って帰ってきたゼンマイたち。

山用の45リットルザックにふんわり満載くらいの量。山菜と言ってもほぼ水なので重いのです。

さて採ってきたゼンマイは筵(むしろ)の上に広げて、綿を取ったり、茎の固すぎる部分を折り取るなどの作業です。この時にゼンマイの先のクルクルしている若葉部分を取ってしまう地方もあるようですが、我が家はクルクル若葉部分はそのままで次の処理に向かいます。このクルクル若葉部分は後の処理をきちんとやれば、自然にきれいに取り除くことができるのと、採取するゼンマイの量が多いのでチマチマやってられないという事情もあるように思います。なお、ゼンマイの綿を取り除くこともしないで次の処理過程に入る地方もあるようで、本当に地方や家によって流儀が異なるようです。

写真の上に写っているのは私の娘。保育園くらいからこのゼンマイの下処理作業をやってもらっているので、もう教えなくても慣れた手つきで綿取り作業をやります。横浜の小学生でゼンマイの下処理ができる小学生は娘くらいかもしれません。

上にも書いた通り今年のゼンマイはちょい季節が早く進んでおり、綿をすでに脱いでいるものが多かったので、綿取り作業はとても楽でした。土から出たばかりの若々しいゼンマイはびっちりと綿を被っていますし、それが朝露や雨で濡れていると、本当に綿が取りにくいのです。

湧き水で杉の葉を燃やしながらゼンマイを煮る

次はゼンマイを煮ます。

まずは大きな鉄鍋に家の前の湧き水を満タンにして、沸騰させます。沸騰したら、鍋の底に藁束を敷いて、綿を取ったゼンマイを投入します。

鉄鍋でお湯を沸かす・ゼンマイを煮る燃料はよく乾燥した杉の葉(”すぎっぱ”と我が家では呼ぶ。)を使います。スギの葉は脂分が多いので、燃やすと火力が強く、短時間で、お湯を沸かしたり大量のゼンマイを煮たりするには最強の燃料です。

飼養する杉の葉は家の周りに植えてあるスギの木が落とした葉っぱたちです。スギは花粉症の原因で最近では悪者扱いですが、我が家では家の周りに杉が植えてあり、防風林的な役割をしてくれているし、夏は日除け的な役割もあり、スギの葉はゼンマイを煮る時の燃料だったり、あるいは囲炉裏の燃料だったり、現役で薪炭として使っているので、比較的仲良くやっています。

なお、新潟といえども湧き水やスギの葉でゼンマイを煮る家はほぼ無くて、水道水とガスで煮ているはず。味の方は、、、私は我が家のゼンマイ以外をほとんど食べたことが無いので、差があるかはよくわかりません。

ゼンマイの下に敷いている藁束はこんな物。ゼンマイが煮立った後、鍋底側のゼンマイと水面側のゼンマイのポジションチェンジ・天地返しをスムーズに行うために敷きます。

藁束は家の田んぼで採れた稲の藁を束ねて一方を結んだもの。鍋底全体を覆うように広げて沈め、その上にゼンマイを乗せて煮ます。持ち手の方は水面より上に出るので杉の葉の強火で焦げたり燃えたりします。なのでボロボロになったらワラを適当に束ねて結んで作り直す消耗品です。

大鍋で大量の湯を沸かしてもゼンマイを鍋にあふれるくらい入れると一気に湯温は下がります。杉の葉を大量投入し続けて、ガンガン燃やします。

このゼンマイの下処理で煮る時に、アク取りのために重曹や灰を入れる流派もあるようですが、我が家の場合は何も入れません。水のみで煮ます。

一煮立ちしたら、藁束を引き抜きながら、先祖伝来のシャモジのようなヘラを使いながらゼンマイの天地返しを行います。藁束はこの天地返し、ゼンマイの上下を入れ替えるために敷いたものです。

藁を引き抜き天地返しをした後のゼンマイ鍋。景気よくすぎっぱを投入し、強火を保ちます。

天地返しをして一煮立ちしたら、煮るのは終わり。そんなに長時間煮込む必要はありません。鍋からゼンマイだけをシャモジ状のヘラを使って笊にゼンマイを上げます。鍋のゼンマイを煮たお湯はそのままにして、再び鍋底に藁を敷いて、次のゼンマイたちを煮ていきます。

こちらが鍋から先祖全来のヘラ?シャモジ?でザルに上げたばかりのゼンマイ。生の時に比べてくすんだような緑色になります。

ちなみにゼンマイを煮た後の煮汁はこんな感じの色になります。

なかなか自然界では斬新な赤紫色。ゼンマイを生で食べてみるとえぐみが凄いので、確かにこのくらいの色は出しそうだな、と思ってしまいます。この水は熱いし、ゼンマイのえぐみもたっぷりなので雑草にぶっかけるとよく枯れます。天然の除草剤です。

ゼンマイ干しとゼンマイ揉み

さて湯から上げたゼンマイは、藁で出来た筵の上に広げて、ゼンマイ干し、乾燥の工程に入ります。

我が家ではこれも先祖伝来の稲ワラで出来た筵(ムシロ)の上でゼンマイを干します。実はこの稲わらの筵の上で干すのがとても重要なのです。筵の素材は天然素材の稲藁なので、適当に水を通したり吸ったりしますし、ざらざらも強めで筵の上に並んだゼンマイの隙間も大きく空気がよく通ります。なので、鍋から上げたばかりのゼンマイを干すには具合が良いのです。

稲藁製の筵の優位性は他にもあります。この茹でたゼンマイは単純に並べて干す、乾燥させるだけでは調理時に「棒のような」ゼンマイになってしまいます。水で戻したときにしなやかさを持たせるには、このゼンマイ干しの過程で、何度も揉んで柔らかくさせることが重要なのです。このゼンマイを乾燥させる際に何度も筵の上でゼンマイを揉んでやるのですが、ある程度ざらざらで強度のある稲藁製の筵だと、強い力で揉むことができます。この力を込めたゼンマイ揉み過程で、ゼンマイ先端部分の若葉部分は自然に取れていきます。

ゼンマイ揉み作業。このゼンマイ揉みの過程でゼンマイたちはだんだんまとまって小さくなっていきます。

ということで、ゼンマイは昔ながらの稲藁製の筵の上で行うのが合理的と思います。イグサで出来たゴザもゼンマイ干しに向いていると思いますが、ちょっと軽いか?でも取り回し面では稲藁の筵より楽かもしれません。水を通さないビニールシートや新聞紙の上で干しているシーンを見かけたことはあるのですが、これだとだとなかなか水分が抜けなかったり、強い力で揉めないので、良いゼンマイ出来るのか?と心配になったりします。

ゼンマイ揉みを繰り返し、完全に乾かしていきます。天候にもよりますが、晴れの日で3日位干すと↓写真の右下のように色が黒っぽい乾燥ゼンマイが完成。左下のゼンマイは若干赤っぽいところがあるので、もうちょい乾燥させた方がよさそうです。

使っている道具は祖父母の代(?もっと昔からか。)から使われているもの。令和の時代では見かけなくなってきた代物と思うので、少し紹介。左上の丸っこい笊(ザル)と右上の筵(ムシロ)は上に出てきました。下の紡錘形のものは箕(ミ)。ゼンマイ干しではゼンマイが乾いてきて小さくなると筵からこの箕に移して乾燥を進めることが多いのです。筵で最後まで乾燥させても良く、実際可能ではあるのですが、箕の方が小回りが利いて取り回しがいいので、ゼンマイ揉みの過程が終わった仕上げの干し段階では、箕に移して干すことが多いです。

またゼンマイ干しに重要なのは太陽!よく乾燥して晴れた日が最適で、太陽が出ない日はゼンマイ干しはできません。そしてゼンマイをきちんと干せなかったり、水分が残っていたりすると、カビが生えてきたり、そこまでいかなくても変な風味や雑味が付いたりします。

なので、天気の様子を見ながらゼンマイを煮て干すタイミングを考えながらゼンマイ採りに行きますし、朝一で取ってきて太陽が強い時間の昼前にはゼンマイ干しや乾燥の過程入りたいところ。午後に採ってきた場合は、夜なべで綿取りまで済ましておいて、翌朝から煮て干す工程に入る事もあります。

午後に採ってきたゼンマイ、家の中に持ち込んで夜なべで綿を取ります。

なお、ゼンマイ干しは3日程度で終わりますが、母曰く「ゼンマイは干した後、熟成させた方が美味しい」らしく、熟成します。熟成といってもビニール袋に入れて戸棚に入れておくだけ。我が家の場合はお盆過ぎ(8月中旬頃ころ)からその年に採れて干したゼンマイを出すようで、それまではその前に採れたゼンマイを食べるとのことでした。乾燥ゼンマイの場合は野菜やコメのように「採れたて!」をありがたがる必要はありません。

我が家のゼンマイの下処理は以上のような形です。ゼンマイ採りとその後の処理の文化は、目に見えない形で、急速に衰退していると思われますので、今年は念入りに写真や動画を撮ったり母にコツを聞いたりしました。

(付記)タケノコの処理

この連休時にタケノコも採ってきたので、その処理も書き足しておきます。

タケノコは皮をむいて柔らかそうなところを選別します。母が柔らかいところを選別。包丁でザクザク切っています。

ゼンマイと同様に鉄鍋に湧き水で満たします。タケノコを煮る時はあく抜きのために米の糠を入れます。米の糠は自分の家の田んぼで採れたものです。

ゼンマイと同じように杉の葉を燃料にして煮立てます。タケノコはよく煮た方が柔らかくなるので、ゼンマイとは違って長時間ゴトゴト煮まして、そのあとは火が消えても冷めるまで放置して出来上がりです。

タケノコも春先の楽しみですね。ゼンマイと違ってすぐ食べられるのが良いです。

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