みんなが大好きなラッコですが、日本ではラッコを飼育している施設はどんどん減っており、現在は鳥羽水族館のみ。そして鳥羽水族館で飼育されているのは高齢の個体だけとなっています。

”日本でラッコが飼育されているのは鳥羽水族館のみで、これが日本で見られる最後の飼育ラッコ”ということで、鳥羽水族館のラッコは大変な人気となっておりまして、鳥羽水族館では2025年3月から、ラッコは10名程度のお客さんを1分ずつ入れ替え制で見るという観覧ルールを設けています。

この観覧ルール自体は公平さを担保するための良いものだと思うのですが、このようなルールを作らなければならいくらい鳥羽水族館側も大変な苦労をされているのだろうなと想像します。このルールの運用のためにスタッフを貼り付けなけなければでしょうし、多くのお客さんが来るとどうしても客同士のいざこざ、、、とまではいいかなくても、コアなマニアとライトなファミリー層やカップルなどが同空間でラッコを見るという時点で、なかなか難しい場面も生じたりもありそうです。鳥羽水族館でゆっくりラッコを観察するのは難しそうな状況です。
そういう時だからこそ主張したい!
”飼育ラッコの観察が難しいなら、野生のラッコを見ればいいじゃない?”と。
実は野生のラッコを観察するのはそこまでハードルは高くなく、特に野生のラッコの生息地として著名になりつつある北海道東部の霧多布岬に行けば、比較的高確率でラッコを見ることができます。

特に鳥羽水族館からもそこそこ距離があり、また全国の航空網の中心となる東京にお住まいの方がラッコを見に行こく場合、実は東京から鳥羽水族館に行くのも北海道の野生個体を見るのも、時間や手間ではそこまで大きな差は無いし、霧多布の方がラッコをゆっくり観察できるので、ラッコを見るなら北海道の野生のラッコを見に行こう、というのも検討してほしいのです。(北海道の地方を応援したい私からの勝手なお願いではあるのですが。)
野生のラッコが暮らす霧多布岬は↓北海道東部の浜中町にあります。
もし北海道の東部・道東方面(釧路や根室方面)に行った経験がない方なら、野生のラッコだけではなく、空港に降り立った瞬間からラッコの生息地に行くまでの行程は、新幹線で内地を移動して鳥羽水族館に行くより、絶対に非日常性が高い、思い出深い旅になるはずです。
今回は「ラッコを観察する」ということを軸に、鳥羽水族館の飼育個体を見に行く場合と霧多布岬の野生個体を見に行く場合を比較して、ラッコを見に行くなら霧多布に行ってみようか、、、という人が多くなるよう、霧多布に行くハードルは案外低いことや、ラッコなら霧多布!道東!!ということを紹介していこうと思います。
まずは東京にお住まいの方がラッコを見るまでにかかる時間について、鳥羽水族館と霧多布岬でどのくらい違うのか比較していきましょう。
東京から鳥羽水族館までの所要時間は?
東京の人が鳥羽水族館のラッコを見に行く場合、一般的なルートは東京駅→名古屋駅→近鉄名古屋駅→鳥羽駅というルートで、以下のような感じです。
東京駅発 | 6:15 |
新幹線・のぞみ3号 | |
名古屋駅着 | 7:50 |
徒歩 | |
近鉄名古屋発 | 8:10 |
近鉄特急 | |
鳥羽着 | 9:48 |
徒歩10分くらい | |
鳥羽水族館着 | 10:00 |
東京駅を6:15に出て、3時間45分後に鳥羽水族館に10:00に到着です。ちなみに料金は新幹線・近鉄特急を指定席利用で13970 円でした。

東京から北海道・霧多布岬までの所要時間は?
続いて東京の人が霧多布岬に行く時のルートで、これは東京駅→羽田空港→釧路空港→霧多布岬がベストと個人的に思います。このルートだと所要時間は以下のとおり。
東京駅発 | 6:15 |
モノレールとか | |
羽田空港着 | 7:05 |
羽田空港発 | 7:40 |
AIRDO71便 | |
釧路空港着 | 9:20 |
釧路空港まではこんな具合です。東京駅~羽田空港は50分程度かかると見込みつつ、飛行機が出る約30分前には空港に着く計算です。霧多布岬は釧路空港より中標津空港の方が近いのですが、中標津は飛行機の便数が少ないので、比較的便数の多い釧路空港を選びました。
釧路空港からはレンタカーで霧多布岬を目指します。車を借りる手続きなどがあるので、釧路空港着の30分後の9:50に空港を出発する想定です。
釧路空港から霧多布岬までは102kmで1時間32分の道のりで、11:22に霧多布岬に到着です。釧路空港近くから道東の大都市・釧路市街でストップせずに根室方面へ行く高速道路が2024年末に開通したばかりなので、東京から霧多布岬に本当に行きやすくなりました。
東京駅を6:15 に出る想定なので、霧多布岬まで掛かった時間は5時間7分です。鳥羽よりは時間はかかりますが、とはいえ朝に東京を出て午前中には霧多布岬には立てます。案外時間がかからないのです。
ちなみに釧路空港→羽田空港行きの最終便出発時間は18:30です。なので15:30くらいに霧多布岬を出て逆ルートをたどればその日の内に東京に戻ることができますので、東京から日帰りも可能です。

公共交通メインでも日帰り可能ではあるけど、、、(非推奨)
北海道の地方を回るとなると公共交通が不便なところが多く、車移動メインで考えてしまいますが、霧多布岬は公共交通機関+徒歩のみでも東京から日帰りは可能です。
東京駅発 | 6:15 |
モノレールとか | |
羽田空港着 | 7:05 |
羽田空港発 | 7:40 |
AIR DO | |
釧路空港着 | 9:20 |
釧路空港発 | 9:40 |
空港連絡バス | |
釧路駅着 | 10:16 |
釧路駅発 | 11:13 |
JR根室本線 | |
茶内駅着 | 12:19 |
茶内駅発 | 12:25 |
浜中町営バス | |
ゆうゆ着 | 12:55 |
「ゆうゆ」というのは「浜中町ふれあい交流保養センター 霧多布温泉ゆうゆ」で公共交通で行ける霧多布岬の最も近いポイントになります。ゆうゆから霧多布岬のラッコまでは約3kmの道のりで、ここからは徒歩になります。
そして日帰りの場合の行程は以下のとおり。霧多布岬から東京に向かう終電になります。
ゆうゆ発 | 14:00 |
浜中町営バス | |
茶内駅着 | 14:35 |
茶内駅発 | 14:50 |
JR根室本線 | |
釧路駅着 | 16:03 |
釧路駅発 | 16:30 |
空港連絡バス | |
釧路空港着 | 17:15 |
釧路空港発 | 18:30 |
AIRDO74便 | |
羽田空港着 | 20:15 |
ゆうゆバス停起点で1時間5分の滞在時間になります。この間に片道3kmの道のりを走破し、霧多布岬まで往復しなければなりません。物理的には不可能ではないけど、ラッコをゆっくり観察するどころではなく、ワンタッチしたら帰京するような感じになりそうです。せめてゆうゆから霧多布岬まではタクシーを用意・利用した方が良さそうですが、そもそも日帰りは慌ただしすぎるので一泊しましょう。。。
※注意※ 鳥羽水族館到着時間≒ラッコ到達時間にならない可能性がある
上述のとおり東京駅から鳥羽水族館までは3時間45分で、霧多布岬までは5時間7分。「鳥羽水族館の方が東京から時間がかからじゃないか!」というのは正しいのですが、1時間20分程度の差。北海道の端っこまで行く割には、それほど時間差が無いといえるのではないでしょうか。
また、鳥羽水族館のラッコに到達するまでにはもう一つハードルがあります。
というのは鳥羽水族館のラッコは、10名のお客さんが1分観覧したら交代する制度なので、ラッコにたどり着く時間はそのときの混雑状況の影響を受けます。空いている暴風雨の平日の午前とかはすぐに見られると思いますが、混雑時には待つ場合もあるようです。こちらの実際に鳥羽水族館のラッコを見に行った記事では25分待ったようですし、5月のゴールデンウイークの繁忙期には100分待ったという情報もSNS上にありました。そこまで極端ではなくても、週末や夏休みなど比較的混雑する時期は待ち時間が生ずる可能性があります。
ひとまず東京駅から鳥羽水族館のラッコまでは3時間45分+αが掛かることになります。また鳥羽のラッコをじっくり観察したいと思っても、交代制なので1分観察したらまた最後尾に並ぶ、を繰り返すことになるので若干慌ただしいか。
霧多布岬は、、、、調子がよければ、岬の駐車場から歩いて一分かからずにラッコを見ることができますし、ラッコの観察が困難なほど混雑することはありません。
ラッコ観察の観点から霧多布岬が鳥羽水族館より優れているポイント
東京からの到達時間は1時間20分ほど鳥羽水族館が優位でしたが、混雑具合は霧多布岬が圧倒的に優位でした。他にもラッコを観察する観点から、霧多布岬が鳥羽水族館より優位な点を挙げていこうと思います。この辺も勘案していくと多少到達までの時間が長くかかるとしても霧多布岬に行きたくなる、、はずです。
私は北海道の地方が好きなので、霧多布優位のバイアスがかかっているのは認めつつも、なるべく客観的に書いていこうと思います。
ラッコの個体数が鳥羽水族館より多い!
鳥羽水族館で飼育されているラッコは2頭ですが、2025年5月現在、霧多布には鳥羽水族館より多くのラッコが生息しています。私が2025年5月に訪問した際には6頭のラッコが岬の下を泳いでいました。

季節と運が良ければ子育て中のラッコやラッコの赤ちゃんが見られる!
鳥羽水族館の個体は高齢の個体が2頭の飼育で、子孫を残すことは難しいのですが、霧多布岬を2025年5月に訪問した際は2頭のメスが子育て中でした。日本で赤ちゃんのラッコを見たいなら霧多布を目指すしかないです。(霧多布以外の野生ラッコを狙うという選択肢もありますが、まぁ霧多布が確実性が高いです。)

人が少ないので、ラッコ独占もありうる!
霧多布岬は人がそんなに多く来ることはないので、じっくりラッコを観察や撮影ができます。霧多布岬はちらほら観光客が来たり、ラッコ好きな方がいたりしますが、それでもキャパを越えることはなく、交代制でラッコを見るとかになることはまぁないでしょう。観察者側の体力と気力の続く限り、観察し放題です。

ラッコとの間にガラスなどの仕切りはない!
当たり前ですが、霧多布のラッコは飼育されているものではなく野生下で暮らしている個体ですので、自分の目の玉の前を遮るものは何もなくラッコを観察できます。ガラス越しではない野生のリアル感が魅力です。

入場料は無料&いつでも好きなだけ観察可能
野生ですので、入場料も営業時間もありません。観察する時間は観察する者側の都合で決められます。
霧多布以外でもラッコを見られる可能性がある!
これは運が必要ですが、道東にラッコがいるのは霧多布岬だけではありませんので、丹念に探せばいろいろなところでラッコを見かける可能性があります。以下は霧多布以外の道東の海岸で私が見かけたラッコたちの写真です。



野生のアザラシやタンチョウなども見られるかもしれない
霧多布岬周辺は野生生物の宝庫。ゼニガタアザラシが泳いでいることもありますし、ちょっと足を伸ばして別海町の野付半島の野生のゴマフアザラシ観察もついでにできるくらいで、野付半島の観光船乗り場まで70㎞ほど。車で1時間ちょいの距離です。そこまで行かなくても霧多布湿原で、タンチョウを見かけたり、湿原の雄大な景観を楽しんだり、他の野生生物を観察できるチャンスがたくさんあります。

ラッコ観察観点の霧多布岬の弱点(鳥羽水族館が優位な点)
これまではラッコ観察における霧多布岬の優位な点を書いてきましたが、弱点というか鳥羽水族館が優位な点もあります。その辺りも書かないと不公平と思うので、霧多布岬の弱点・留意点なども掲げておこうと思います。
野生の個体なのでいないこともある
野生の個体を追いかけるときは避けては通れないのが、確実に見られるという保証がないこと。これはラッコに限らず、また霧多布に限らず、の話ではあるのですが、霧多布でラッコを見られる確率は比較的高いと思いますし、私個人でいえば最近は4回行って4回ともラッコを見ているのですが、とはいえ、何ら保証はできないので、100%の確率でラッコを見たいなら鳥羽水族館の飼育個体が確実です。
天候の影響をもろに受ける
天気が良いときは良いのですが、その逆になることももちろんあります。真冬の荒天時はさすがに萎えますし、霧が出るとまともに観察できないこともあります。霧多布岬には屋内に退避できる施設も冷暖房がある施設もありません。荒天時は車の中で天候待ちをするくらいしかないです。
”霧多布岬(きりたっぷ)”はアイヌ語由来の地名ですが、私の中では北海道のアイヌ語由来地名の漢字の当て字が上手いランキング1位で、本当に霧が出ることが多い霧多布岬・・・。なお霧多布はアイヌ語の「キィタプ(キータプ)」が語源で、「茅(かや)を刈る場所」を意味するそうで、日本語の”霧”という意味とはもともと関係ないのです。

ラッコまでは遠いので双眼鏡必須
上の方で、”ラッコと自分の目の玉の間を隔てるものはない”と書きましたが、一方で肉眼ではラッコは点程度にしか見えない距離でもあります。なのでじっくり観察するなら双眼鏡は必須ですし、私もここに行くなら双眼鏡は絶対に持っていきますので、双眼鏡持参は強くお奨めしたいところです。
写真を撮る場合も同様で、望遠レンズは必須ですし、スマホで撮れる距離ではないです。

ラッコ観察観点から霧多布岬と鳥羽水族館の比較まとめ
最後に今回紹介した霧多布岬と鳥羽水族館のラッコ観察を一覧表にまとめてみるとこんな具合です。
霧多布岬 | 鳥羽水族館 | |
ラッコまでの所要時間 (東京駅起点) | 5時間7分 | 3時間45分+α (αは混雑状況で変化。SNSでは最大100分待ちの情報あり) |
交通費 (東京駅起点) | 飛行機代+レンタカー+ガソリン・羽田までの電車代 (羽田~釧路の飛行機代はAIRDOの早期予約で12000円位になることも) | 新幹線+近鉄利用で13970円(片道) |
入場料 | 0円 | 大人1名:2800円 |
ラッコの頭数 | 私の経験では3~5頭程度のことが多い | 2頭 |
ラッコの年齢 | 赤子~大人 | 大人のみ(老齢個体) |
ラッコまでの距離 | 遠い。双眼鏡推奨。遮るガラスなどはない。 | 近い。ガラス越し。 |
天候の影響 | 影響が絶大。 晴れなら最高。雨や霧だと萎える。 | 屋内なので、天候影響はなし。 |
光 | 太陽光のみ | 屋内で、人工照明だったような。 |
混雑具合 | 人が少ない | ピーク時は激混み |
観察の可能性 | 個体がお出かけしている、天候不順等の理由で観察できない可能性あり。 | 確実に観察可能。 |
観察可能な時間帯 | 特になし | 営業時間内(9:30-17:00) |
観察可能な時間の長さ | 観察者の気がすむまで | 1分交代制で順番待ちの可能性あり。 一分見た後は見るときは再度順番待ち。 |
一言でまとめると、霧多布岬はハイリスク・ハイリターン、鳥羽水族館はローリスク・ローリターンといった感じでしょうか。これはラッコだけではなく他の種でも、野生個体を見に行くか、飼育個体を見に行くかに共通的なものでしょうか。
鳥羽水族館も霧多布岬もそれぞれ良いところはあると思いますが、せっかく野生のラッコが日本に入るので、大自然の中で暮らす野生のラッコの様子をご覧頂きたい!と願うものです。
(参考)霧多布岬など北海道で野生のラッコを観察した記録

(参考)鳥羽水族館を訪問した際の記録

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