2023年も12月に入りクリスマスから冬休みシーズン!動物園や水族館はかき入れ時でクリスマスイベントなどを実施している園館も多いと思われます。
一方で私個人は動物園や水族館のハロウィンやクリスマスイベントで、モヤっとすることがちょいちょい目に入ることがあるので、予防的措置として、この季節の動物園や水族館には近づかないようにしています。
「モヤっとする」と理由は、飼育動物にサンタの服を着させたり、他の種(よくあるのはトナカイでしょうかね)の被り物を付けたりするのを見ると、微妙な気分になるから。飼育動物の本来の自然な姿を見たいのに、なぜ擬人化したたり、本来の種の特徴と離れた他種の被り物や人工的な被り物を付けるのでしょうかね。
こういうことを書くと嫌われるとは思うのですが、ちょっと立ち止まってその類の展示について考えてみました。
動物園や水族館が飼育動物を擬人化させたり他種を模倣するような展示は必要ない
最近、動物園や水族館の存在意義って何?という素朴な疑問から、動物園水族館のあり方、その存在目的など、めんどくさそうなことを考えたり、関係する行政文書や日本動物水族館協会(JAZA)の規定を読んだりしています。
そんな中で、”アザラシにサンタのような人間っぽい恰好をさせたり、他の動物(例えばトナカイ)の被り物をさせたりする展示があるとして、その展示の意義は何か?”とか”他種を模した格好をさせることによって、野生動物であるアザラシの何かを来館者側に伝えることがあるか?”とか、考えるだけで胃もたれしそうな問いについて考えます。
そういった自問自答の末に、”動物園や水族館で飼育動物を擬人化したり、他種を模した格好させる展示に意義は(ほぼ)ない”という結論にたどり着いています。
仮にアザラシに服を着せたり、猫耳やトナカイ耳を付けて観察してもらうことで何か得られるモノってないですよね?強いて言えば、そのような展示で興味を引いて、本来訪れることない層の人が園館に来る、動物に興味を持つということにつながる可能性もなくはない??くらいか。。。と思いつつも、そんな微妙な可能性のために、飼育動物を使ってそのような展示をやる必要まではないの?というのが私の考え。
なので、そんな展示が増えるクリスマスやハロウィンシーズンは、展示を見ては引いてしまうようになりまして、楽しめない。そのような動物展示のおかげで、その施設に対してネガティブな感情の芽が出てきますし、ネガティブな感情を持つことは楽しくない。また、せっかく楽しんでいる周りの人たちを否定的に見る自分の感情の揺らぎも嫌なものです。
よって、この季節はこの手の施設にはなるべく近づかないようにしているのがここ数年の傾向。
私もかつては動物にコスプレさせるのを見て面白いと考えていたクチなので、そんなに偉そうなことも言えないのですが、アザラシ(だけでもなく他の飼育動物も含め)は擬人化や他の動物の姿の被り物等で表面上の可愛さや面白さを追求するのではなく、アザラシのままを見せて欲しいな、と思います。その種はありのままの姿、アザラシの場合は、ただ泳いだり転がったりしているだけで素晴らしいのです。
動物に服を着せたりする展示にネガティブなことを書くと「楽しんでいるのに茶々を入れるな、お前の考えを押し付けるな」と思われることもあるだろうなと思います。私の好みという点は否定もしませんが、客観的にもそのような擬人化や他種を模倣させるような展示は、行政や業界団体の明文化されている展示のあり方や規定見からも、大変微妙な扱いになってきていると思いますので、その辺りの観点からもこの手の展示は時代遅れその点だけは紹介しておこうと思います。
展示施設で飼育動物に妙な格好をさせたりすると抵触しそうな告示や基準
展示動物を飼育する時の施設が留意すべき点を定めた動物愛護管理法に関連する環境省の告示「展示動物の飼養及び保管に関する基準(環境省告示第33号)」。環境省が作った告示なので国のとしての方針になります。
(1)展示方法
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/baseline.html
動物園動物又は触れ合い動物の展示に当たっては、次に掲げる事項に留意しつつ、動物本来の形態、生態及び習性を観覧できるようにすること。
ア (略)
イ 動物園動物又は触れ合い動物の飼養及び保管を適切に行う上で必要と認められる場合を除き、本来の形態及び習性を損なうような施術、着色、拘束等をして展示しないこと。
ウ、エ、オ(略)
太字・赤字強調は当サイトが実施
〇日本動物水族館協会(JAZA)の「動物福祉規定」。動物園や水族館の元締め的存在であるJAZAの規定です。
(教育活動)
JAZA動物福祉規定 https://www.jaza.jp/assets/document/about-jaza/document/2021/doubutsu-hukushi-kitei.pdf
第5条 動物を用いた教育活動は、動物福祉の向上を常に考慮して実施し、次の各号に適合し、生物多様性や野生生物の保全に寄与する内容とする。
(3) 動物に係わる情報発信に関しては動物の自然な行動に焦点を当て、動物の健康を害する危険性がある行動、過度な擬人化は行わないこと。
太字・赤字強調は当サイトが実施
、、、アザラシにサンタの服を着せたり、トナカイの被り物などをさせる展示はこれらの規定からしても微妙な扱いになりそうです?
こういった規定が出来てきている流れを受けているのと思われますが、最近の動物園・水族館で飼育動物に服を着せたり被り物をさせるイベントは大分見なくなってきたな、という印象はあります。
クリスマスイベントは、園内施設、飼育環境にクリスマス要素を取り入れたり、ハロウィンでは餌の感じをカボチャのイメージを取り入れてみたり、人間側がイベントな服装(飼育員さんがサンタの服を着るとか)をしてみたり、いろいろ工夫されていると感じますし、そのような展示は落ち付いて拝見できます。
例えば↓のようなサンタさんの格好をした展示は季節感もあって素敵だと思います。
昔(と言っても2000年代半ばくらい?)はこのような展示基準や倫理規定は無かったので、展示動物に服を着せたりするのは普通の事だったと思います。このような規定が整ってきた現在でも、飼育動物に服を着せたり猫耳付けたりカチューシャを付けたりする施設もゼロではないようです。またそのような展示が、行きたくなるモチベーション向上→来客数アップに繋がるとしたら、動物を擬人化したり他種を模したりする展示に肯定的な反応をする受け手側(つまり客側)の意識改革も必要と思います。
なお、このような考えは動物展示施設で飼育される家畜化・ペット化されていない生物種の展示に対して思うことで、犬猫などのペット・家畜にサンタっぽい服を着せるとかそういうのは、特に否定も肯定もしません。(個人の飼い主さんが動愛法の範疇の中で好きにやればよいこと)
飼育施設のアザラシ断ちをしている間に、アザラシを見ないと死んでしまう病が発症したらどうするか
ハロウィンあたりからクリスマスにかけて、つまり11月くらいから1月くらいの約2か月間、動物園・水族館のアザラシ断ち期間になるわけですが、アザラシを見ないと死んでしまう病の禁断症状が出たらどうするですが、答えは一つしかないっ。
飼育アザラシを見ないならば、野生のアザラシを見れば良いじゃない・・・っ!
実際この季節は北海道の野生アザラシもかき入れ時(?)になってきているので、結構な高確率で野生モノを堪能できるはず。
北海道の海の岩場は、周辺に人類が皆無&アザラシはてんこ盛りで、私たちを待っているはず。大量のアザラシ、時には日本の施設で飼育されているアザラシの総計より多い数のアザラシが目の前に転がっていて、それを一人で独占できるのが野生の魅力で、また海の偉大さです。ハロウィンもThanksgiving Dayもクリスマスも正月も大安も仏滅もガン無視して、ただただ転がっているアザラシたちを堪能しましょう。
自分以外人間は周囲にいないけど、アザラシは大群でゴロゴロしている岩場で過ごすのが理想のクリスマスという筋金入りの人もいらっしゃるのではと思います。

そういえばちょい前に東京・関東近郊の人が最速で野生アザラシを見るにはどこに行けばよいか検証したことがあったので、禁断症状が出た人用に、ご参考までリンクを貼り付けておきます。
動物園や水族館の動物の展示に関連するエントリー
水族館や動物園の飼育のあり方は、これまでも何個かまとめたりしてきました。飼育展示のあり方や環境省告示やJAZA規定はこちらで詳しく書ているので、貼っておきます。
以下は「そもそもアザラシを動物園や水族館で飼育する意義って何だろ?」と考えたもの。無条件に動物園や水族館などの飼育施設を肯定するのではなく、見世物的な目的だけではなく、しっかり教育や研究、種の保存といった公的機能を発揮しているか、という観点で飼育施設を見るのも大事だと思うのです。
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